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最近読んだ本、「天国に行きたかったヒットマン」、「雨月物語精読」

ヨナス・ヨナソン、「天国に行きたかったヒットマン」 この人の本、「国を救った数学少女」、「窓から逃げた100歳老人」どちらも ものすごく面白かった。抱腹絶倒ものだった。なんと言うハチャメチャな発想、 なんと言う大胆不敵な行動、世界の大物を手玉にとって、民間人の癖に原爆まで 手に入れて、何をするやら、予測不能の大活劇、そんなこと有り得へん世界やのに 変に説得力がある。素晴らしい。 これもそんな本だ。 素手で一発で人を殴り殺しかねない、あるいは殺ししかできない、そういう恐ろしい 男が刑務所からでてきた。彼をヒットマンアンディシュと名付けよう。 ふらふらと場末の安ホテルにやってきたがそこにはどじな受け付け係の若い男と 教会から追い出された若い女の牧師がいて、そこからわけのわからんドタバタが 始まる。わかがわからんうちにヒットマンアンディシュのこわもてと腕っ節が 金になるとわかってきた。もはやブランド化していて、どこをどつくか、骨の 一本も折るかでビジネスが成立してしまうのだ。 金はいくらでも入って来る。 しかし、うまい話は長くは続かない。 ヒットマンアンディシュは神の道に目覚めるのか? 受注した暴力沙汰はどうなるのか? 裏世界のボス、伯爵、伯爵夫人は彼らをどうするのか? 軽くて楽しい、ゆるっと楽しめる。

稲田篤信編著、「雨月物語精読」 大分前になるけど、「雪女」って映画をみてとても面白かったんで怪奇物の原作を 読んでみたくなった。けど、ラフカディオ・ハーンの本はあんまり面白ろなかったんで こっちにしてみた。「雪女」の話はないけどとても面白い短編集だ。 白峰 有名な西行が崇徳院の墓を訪ねて亡霊を諌める話。 菊花の約 来年の重陽の節句に又会おうと固い約束をしたけど、訳あって死んでしまった男が 律儀に約束を果たそうと魂になって会いに来る話。 中国の昔話からとったと思う。 浅茅が宿 いにしへの真間の手児奈をかくばかり恋てしあらん真間のてごなを 有名な真間の手古奈の悲恋の話。 夢応の鯉魚 夢の中で鯉になって遊んでいたが、釣られてしまった。 ありゃりゃと思ったら目が覚めた。 これも中国の昔話からとったと思う。 仏法僧 忘れても汲みやしつらむ旅人の高野の奥の玉川の水。 高野山の奥の玉川の水は飲むなと弘法大師の言い伝えがあるらしい。 この本では思い違いと書いてるけど、玉川上流では銅や水銀がとれた事があるんで やっぱり毒があったんとちゃうやろか(私の意見)。 高野山で秀次たちの亡霊に脅される話。 吉備津の釜 吉備津神社釜占いの話は今もこの神社に残っている。 蛇性の婬 有名な道成寺の話。 清姫に見込まれた安珍の話のバリエーションか? 青頭巾 死人を食う鬼になる。 これも中国の昔話やと思う。 貧福論 読みやすくて楽しい。 […]

最近読んだ本、「海の見える理髪店」、「絢爛たる影絵ー小津安二郎」

萩原浩、「海の見える理髪店」 不思議な理髪店があった。何の変哲もなさそうな田舎の店に不思議と客が絶えない。 しかも有名人がお忍びで来ることも多いのだそうだ。かっこええ。 そういう店がいつのまにか客を取らなくなったようだ。 ある日、若者が一人その店を訪れた。 そして・・・・。 久しぶりで実家を訪れた。母はどうしてる? 私にとっては自分勝手で、独りよがりで、押し付けがましい・・・ しかし、老いが母をどう変えたのか?・・・・・ こんな夫とやっていけない。子供をつれて実家に帰ってしまった。しかし、 実家で居所はあるのか? そして不思議な手紙が・・・・・。 とてもシュールな話でもある。 母の離婚で実家に連れられてきた茜、子供にも絶えられない貧しさとやりきれなさが 続く。ある日、茜は海を目指して旅にでる。そして出会ったのは・・・・・? 父が残した形見の時計、あんな人生で僅かにのこったお宝のようなもの、どれほどの 値打ちが? お金より人生の足跡か? 中学生の娘が突然なくなった。それから数年。成人式を迎える日がやってきた。 未だに娘のことが忘れられない。夫婦がとった意表をつく行動とは? あまりにも切ない。 少しほのぼの、少しビター、少しシュール、少し素敵でかっこいい、少しおかしい、 少し哀れ、少し哀しい。 すこしずつの短編集。時々心が離れ、時々引き寄せられる。 そんな短編集。

高橋治、「絢爛たる影絵ー小津安二郎」 強烈な個性を強烈に描いた強烈な作品ではなかろうか? 作者は小津安二郎を とても嫌いでとても憎んでいてしかもその個性と才能にどうしょうもなく惹かれて それを認めざるを得なくてあえて描く、描くからには余すところなく描くという 心の中から生まれた本なんとちゃうやろか? それにしても映画ってなんて恐ろしい、こんなに鬼気迫る環境の中からでしか、 生まれて来んとあかんもんなんやろか? わしは素人やから映画を見てもその裏側は なんもわからん。ただストーリーを追って、喜んだり悲しんだり、笑ったり泣いたり、 興奮したり、感動したりしてるだけやけど、それがどういう企みの元に組み立てたてて、1枚、 1枚のカットに落とし込むのか、役者は何をどうみせるのか、観客の心と視線を どう誘導するのか? ありとあらゆるところに拘りと才能が妥協なく注ぎ込まれる ところがなんと凄まじい。 小津の映画がこんなんやったら他の人の作品ってどんなんなんやろ、今の映画は どんな風につくられているんやろ? これから映画をみる見方が変わって来そう やなあって思う。いろんな興味と疑問をもってしばらくは映画を見るかもしれんけど そんなん知らんし、考えもせん方がかえってオモロイかもしれんとも思ったりする。 プロの世界って怖いですなあ。 シンガポールの話も面白い。

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ありがとうございました。

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最近読んだ本、「天地明察」、「江南の鐘」

冲方丁、「天地明察」 映画があったのは知ってた、見てはないけど、話題になってたと思う。しかし、 原作本があるのは知らなかってある本を検索してる時にふと引っかかったんで 面白そうやんかと思って図書館で予約した。 安井算哲、碁界の名門安井家の次男のような跡取りのような不思議な男がいる。 又の名、あるいは後に正式名となるか、渋川春海とも名乗っているらしい。 碁の世界に飽き足らず、算法や暦法にも興味を抱き始めた。 そして、最近、老中の酒井雅楽頭や幕政改革の中心人物である保科正之らに密かに 目をつけられて人物評価をされているらしい。 そんな気配がある。 そしてとうとう命が下った。改暦事業に取り組むのだ。 まずは測量から、日本全国を巡って正確な緯度経度を算出する。 そこまでは順調やったけど、そこから先が苦難の連続だ。どこにでも保守派がいる。 制度には利権もからんでいる。変わると困る人達がたくさんいるのだ。 それに、正しい暦とは何なのだ。どうやって証明する? そして算学塾は? 盛り上がってるか? 関孝和は応援してくれるのか? 春海の恋はどうなった。 算法の世界から天文学、日食、月食と次々に面白い。 しかもそれで誰が儲かるという話まである。 切腹したら誰が掃除する? いやいやいろいろ楽しい話が盛り沢山だ。 昔読んだ、長井義男、「算学奇人伝」も面白かったけどこれもとても面白い。 理論的な部分ではほんまに? という面もないではないような気もするけど、 面白かったらそれでええやんかと思う。 一気に読んで楽しめる本だ。

ロバート・ファン・ヒューリック、「江南の鐘」 大分前に映画館で予告編を見てたら香港映画か何かでこの人のシリーズのうちの どれかが映画化されていた。マイナーな人かと思てたんやけど結構有名な人やったんかと 驚いた。 この人がどの程度中国に関わってて、どの程度詳しいんかはようわからんけど、 荒唐無稽なんちゃうんと思いつつもつい読んでしまう。何となくありそうでなさそうな、 なさそうでありそうな話がミステリーとして結構面白くしあがってる。何か 中国の古典なんかにネタ本がありそうやけどそれはようわからん。 ディ判事は次に任地、蒲陽に赴任したばかりだ。 引き継ぎ書類を見てみよう。気になる事件がある。ある晩、娘が若い男に襲われて 殺された。話は簡単そうだ。しかしどこか気になる。男は娘といい仲だったらしい。 それが何で殺さんとあかんことになったのか? 色々調べてみると謎は混迷してきた。 また、地元の名刹である普慈寺というのもどこか胡散臭い。賄賂で抱き込もうと してきてるんとちゃうやろか? なんで? ここは子授けの神様がいてはるらしい。 不妊の女が一晩泊まると、間違いなく子宝に恵まれるという。 間違いなくおかしい。 しかし、その部屋は外から封印されているという。 本当に仏の力が授かるのか? おかしい? 待ちの外れの廃屋の中で何やら妖しい集まりがあるという。 妖しい。 そして、ディ判事の推理がきりりと光るとすこしずつ謎がとけて、色んな不思議が […]

最近読んだ本、「キルリスト」、「霧の会議」

フレデリック・フォーサイス、「キルリスト」 この本おもしろいわ、映画見てるみたいって思ったらやっぱり映画になってた。 説教師と呼ばれる男がいるらしい。カリスマ的なアジテーターなのか? イスラム教徒による過激なテロが頻発してる。今までごく普通の市民だったような 若者が突然テロリストになって衝動的なテロを起こしているようなのだ。 背後に何があるのか?調査を進めるうちに説教師が浮かび上がって来た。ネット上で この男の説教を聞いた若者たちがいつの間にかテロをしなければいけない気持ちに なっていくというのだ。とても危険な人物だ。 極秘名簿「キルリスト」に加えなければいけない。 そしてアメリカの対テロ特別組織TOSAが動きだす。追跡者登場だ。 ありとあらゆる手段で説教師を追い詰める。しかし、どこにいるか特定できない。 コンピュータおたくはネット上で足跡を辿れるのか、潜入スパイは? ドローンによる攻撃は可能なのか? 意外なところで痕跡が? パキスタンか? アラブのどこか? もしかしたらアフリカ? 周到に少しずつ近づいて行く? ピンポイントを見つけるチャンスはあるのか? 手助けしてるのは人か組織か? 罠にはめることができるのか? さすがこういう世界を描かせたらすごく上手い。ワクワクハラハラで惹きつけられて 一気に読ませてしまう。こんなことって現実にありそうなのが今の世の中なのか?

松本清張、「霧の会議 上、下」 この本も、先日行ったエベレスト街道トレッキングの時、あいにくの雪でエベレストビュー ホテルに閉じ込められてた時に暇やからロビーにあった本を手当たり次第に読んでたら そこにあった本なのだ。清張か、今となっては古臭いんとちゃうやろか? しかし、 他に暇つぶしはないしなあ、とか思いながら読み始めたら、とても面白い。古臭い どころかえらい新鮮やんか。ところが下巻がない。ここには上巻しかないようなのだ。 それはないで、中途半端な心残りで日本に帰った。早速、図書館で借りてきて 全巻完結となったのだ。 ローマ在住の記者がロンドンにやってきた。ある事件に関与した金融界の大物を 追う刑事たちに同行して取材にきたのだ。そして、ある日、街角のカフェで不思議な カップルと出会う。そして、その後、とうとうその大物が殺されて川に浮んだ。 もしかしたらあのカップルが目撃した? そうなると逃げないといけない? ロンドンからヨーロッパへ、マフィヤの世界がどんどんからんでくる。次に殺されたのは誰? それは何故? ミステリーはがぜん緊迫して来る。 怪しい会議とは? そして不倫は? 金と利権をめぐる巨大な闇? 男と女の闇? ロンドン、パリ、モナコ、ニース、フィレンツェ? 舞台も目まぐるしい。 さて、最後はどうなる? 最後はちょっとバタバタやったけど、とても面白い。 今でも十分通用する背景を持った話やと思う。

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最近読んだ本、「鬼殺し 上、下」、「河畔に標なく」

甘耀明、「鬼殺し 上、下」 台湾、客家と言われる中国、福建省から流れたきた一族たちが住む村の山の中に じいちゃんと二人暮らしの少年がいる。そこは少数民族タイヤル族の村でもある。 関牛窩グアンニュポー 。 山深い自然の中で暮らすその子は変わったどうも資質をもっているらしい。大地や森の 精霊たちと話ができるし、地下に眠る鬼王や他の亡者たちとも話ができる。 そして、村の誰一人及ばないほどの力持ちでもある。 時代は日本統治時代に入った頃だ。 ある日、とうとう日本軍がやってきた。いつか青年になっていた帕はその力を認められて 日本軍中佐の養子となし、入隊する。 その中でも異能を発揮して活躍する。飛行機と戦う? 機関車と戦う? 骨太の物語にぐんぐん惹きつけられる。時空を超えて、天空を超えて自由自在だ。 圧倒的な迫力。 まるで、石川淳の小説を読んでるみたいだ。 そしてこんどは国民党軍が入ってくる。 爺さんや鬼王の聖地はどうなる? 帕はどこに行く。 戦後の動乱を生き抜けるのか? 自然と精霊の村はどうなっていくのだ? 私は一体なにものなのだ? 故郷を無くし、身を削って生きていかないといけないのか? 二・二八の台湾の姿が立ち上がる。 分厚い二冊の本が何の重荷にもならへん。どんどん読んでいける。 そして台湾の山の、森の暮らしがどんどんと立ち上がってくる。 こういう台湾の描き方はすごく新鮮だ。 前に読んだ「神秘列車」と通じるものがある。 とても面白い。

松戸与一、「河畔に標なく」 先日、友人とエベレスト街道を歩きに言った時のことだ。部屋の窓から、テラスから エベレストが観れるというのが売りのエベレストビューホテルに泊まった。 2泊3日を歩き通して3880メートルまでやっと辿り着いたのに、えらい天気が悪い。 2泊する予定やし、乾季の真っ只中やからまさか雨が降らへんやろし、偶々 天気が悪くても1日くらいは晴れるやろと高を括ってたら毎日森々と雪が降る。 そういう状況は旅のブログで詳しく書くんでそちらを見て頂きたいんやけど、 その雪の間はどこも行けなくてホテルで暇つぶしをするしかなかった。仕方ないんで ロビーの喫茶コーナーでダラダラしてる時にこの本を見つけた。どうせ暇つぶし やからとぼちぼち読んでたら、とても面白いではないか。 軍事政権下のミャンマーの話だ。ミャンマーは去年行ったばっかりやからとても 興味がある。 民主化運動で逮捕された男がいる。サディストのような刑務所副署長に連日おのれの 楽しみのために拷問されている。ところがある日突然その男が刑務所を脱出した。 副署長は官憲よりさきに男を捕まえて口を封じなければならない。 ミャンマーでも観光化が進んでいる。外国人向けの高級リゾートを作ることが 大きなビジネスのチャンスだ。ある男が自分の夢を叶えようとしてる。しかし、 おいしい話に群がる欲深い男たちに食いつかれボロボロにされそうになっている。 どうしても金を作らないといけない。 中国マフィアの手先になって軍部の腐敗した連中と麻薬の取引をしてる男がいる。 しかし、身辺があやうくなってきた。最後の取引の金をネコババしてどっかに ずらかろう。 そして、ヘリが墜落。 […]

最近読んだ本、「楽園の世捨て人」、「大鮃」

トーマス・リュダール、「楽園の世捨て人」 珍しく爺さんがカッコよく活躍するサスペンスだ。ストーリーに関係なく頑張れよって 言いたくなる。 舞台はスペインの楽園観光地カナリア諸島だ。そこでもう世を捨てたかのような 爺さんが固定客だけが相手のピアノの調律とタクシーの運転手をやっている。 ある日、海辺に乗り捨てられた車の中で生後間もない赤子の死体が発見された。 金に困った売春婦あるいはそれ紛いの女が始末に困って置き去りにしたんやろと言う ことで警察も世間もそれど終わりにしようとしてる。 しかし、何かおかしい。どうも納得できん。エアハートが動き出す。あちこち嗅ぎ回ってると 色んな事実が浮かび上がって来る。これは事件に違いない。 そんなある日、突然、事件が。 親友ラウールの彼女が瀕死の重傷に。親友はどこに消えた? ベアトリスをどうする? 事件を掘り起こすうちになぜか大きな暗闇に触れたのかもしれない。 つぎつぎと危ない事件が身に迫る。 とても異色な感覚のサスペンスで爺さんの活躍がカッコいい。 爺さん、婆さんの濡れ場まである。 とても楽しい。

藤原新也、「大鮃」 大分前に、この作家の「インド放浪」と「西藏放浪」とを読んだことがある。 とても面白い本だった。よくある紀行文やバックパッカー見聞録みたいなのとは 全然違うのだ。たまたま異郷のどこかにいて、あるいは彷徨いついて、何かを 見つめている。そした何か心象風景のようなものを切り取れるそんな瞬間が訪れる のをじっと待ってる。わしにはそんな感じがした。本には沢山の印象的な写真が 載ってたんで、もしかしたらこの人は写真家かもしれんと思ったらやっぱりそうやった。 それで、書店でこの本を見た時、あああの人は小説も書いてるんかと思い、どんなん やろと興味を抱いて図書館で予約した。 ある日、太古はスコットランドに旅にでる。父の故郷オークニーを見て見たかった、 というよりは何かに導かれて来てしまったかのようなのだ。 来てはみたもののそこは荒れ海と風が吹きすさぶ荒地の海岸だ。ただ一つとも 言えるホテルに泊まっても行くところもないかもしれない。ホテルで読んでもらった ガイド兼ドライバーは何十年も乗り続けた彼の風貌とおりの車とともにやってくる。 この海辺の村の彼が考える見所をあちこちと案内してくれる。 そして実はこの男、凄まじい人生を背負ってきたのだ。案内のみちすがら徐々に それがわかってくる。 見所って、決して観光名所ではない。この荒海と烈風吹きすさぶバイキングの時代 からの漁師の村の原風景を見せてくれてるかのようだ。それはもしかしたら、父と 若者をつなぐDNAを揺さぶるかもしれない。 それは一体何なのか? 若者は何に出会うのか? 幻の大鮃とは? 出て来る男たちは老いてもとてもカッコいい。 じわっと感動できる物語だ。

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最近読んだ本、「蓮と嵐 」、「強父論 」、「南蛮阿房列車」

ラン・カオ 、「蓮と嵐 」 開高健の「輝ける闇」はすごいなあって思った。近藤紘一の「サイゴンのいちばん長い日」、 これもすごい。グレアム・グリーンのおとなしいアメリカ人、これもすばらしい。 他にもベトナム戦争を舞台にした本はたくさんある。タイトルを見たり噂を聞いたりしたら つい読んでしまう事が多い。 戦争の悲惨さ、戦争に巻き込まれる人たちの苦悩と悲劇、戦争によって壊れてしまう 心たち。考える事は沢山あった。惹きつけられることも沢山あった。それが何か はようわからんまま、気がついたら何度も「サイゴン」、今でもホーチミンよりこっち の方が親しみやすい呼び方とちゃうやろか、に行っていた。よう考えたら唯の物見遊山、 本に話の裏に表に垣間見えるサイゴンやら東南アジアの妖しい熱気に惹かれてただけの ようでもあった。 この本ではは又違う驚きがあった。 乱暴な言い方をすればあっちから見た世界とこっちから見た世界だ。 わしは愚かにも、あのサイゴン陥落の日、これで戦争が終わったら、いきなり平和がやってきて 秩序がやってきたと思ってた。でも現実はそんな生易しいもんではなかったのだ。 マイはアメリカにいる。サイゴン陥落の日に父親に連れられてヘリで逃れたて来たのだ。 でももうすでに心は壊れてしまったかもしれない。 父親も殆ど寝たきりの生活になってしまった。 家族で過ごしたサイゴン最後の日々が蘇る。 ロックとコカコーラが大好きな娘たちとアメリカ兵との交流。そして悲劇が起こった。 戦の中の街に常にある悲劇。 姉はどうなった? 家族はどうなる? 誰が敵か? 誰が味方か? 信頼と裏切り、愛と欲望。 そして戦いは終わった。 本当に? 平和と幸せが? 本当に? 手ひどい仕返しが始まる。 大量のボートピープル。 なぜか必ず現れる海賊たち、略奪と強姦。 母はどうなった? おじさんは? 親しかった人たちは? 夢中で一気に読んでしまった。 とても印象深い本だ。

阿川佐和子、「強父論 」 テレビでも活躍してるし、エッセイストとしても有名やし、阿川弘の娘さんやし、 てなことで興味を持って読んでみた。個性強い父の姿や、志賀直哉家との交流など いろいろと楽しい内容であった。 それで、気になってお父さんの本を読み直してみた。

阿川弘、「南蛮阿房列車」 内田百間の阿房列車をもじった鉄道話だ。有名な鉄ちゃんらしいから旅の話として とても面白いし、鉄道に対するこだわりも楽しい。 マダガスカルの鉄道、アフリカの鉄道、イギリスの鉄道、ヨーロッパの鉄道、 台湾の鉄道、アメリカの鉄道・・。列車の中の話も面白いし、それにまつわる 土地土地の話もおもしろい。でもやっぱり内田百間がええかなあ。 […]

最近読んだ本、「台湾生まれ日本語育ち」、「大絵画展」

温又柔、「台湾生まれ日本語育ち」 滅茶苦茶面白いわけでもないし、波乱万丈でもないき、奇々怪界でもないし、 起承転結の起伏が激しいわけでもないけど、ついつい先を読んでしまう。 読んでいてとても優しい気持ちになれる本だ。 家庭の中で、ごく普通に、ごく自然に、台湾語で喋ってるかと思ったら、中国語に なってたり、ある時は日本語になってたりとそういうのがごく普通にあるのが 台湾なのだそうだ。ごく普通の家庭でも台湾語と中国語は当たり前のように 混ぜ混ぜで喋られるし、日本統治時代に日本と関係の深かった人や、そうでなく ても日本や日本人と関係の深かった人が家庭にいるとこれに日本語が加わるのだ そうだ。 なんと素晴らしい。わしらは子供の頃から殆ど外国人と接することはなかった。 そのせいかどうか、中学校に行って英語を習い始めたところで唯の勉強の一科目、 コミュニュケーションの手段として考えたこともないし使えたことも勿論ないと いう日本人が圧倒的だと思う。素直にかっこええなあって思う。 現実はそんなええことばっかりではないのは明らかだ。 いろんな暮らしの中のいろんな悩みや歪みも淡々と語られる、とても心地よい エッセイ集だ。台湾総統選挙の話、台湾海峡、馬祖の話、とても良い。

望月諒子、「大絵画展」 これは、ある知り合いの方に教えていただいて早速図書館に予約した本だった。 映画や本や、いろいろ情報を教えていただける知り合いがいるのはありがたい。 いやあ、実に面白い。とても良い本を教えていただいた。 ある時、ロンドンの有名なオークションでゴッホの名画、「医師ガシュの肖像」が 競売にかけられた。第二次大戦後正規の持ち主を巡って数奇な運命を辿った曰く付き の絵画だ。なんとそれが、日本人の実業家に落札されたのだ。そのオークションを 代理で勝ち取った謎の日本人の男とは一体だれなのか? そして、絵画はまた数奇な運命を辿るのか? 持主の会社の破綻と共に名画はまた闇の中へ。 そして、謎の男を巡って、あるいは今はわからない何かを巡って、事件が次々と 起こっていく。 なんとなく暗くて陰惨な話になりそうな予感がして読むのをやめようかと思っていると 事件は意外な展開を迎える。 ここからがとても面白い。何もかもが一気につながっていくかのようだ。 果たして、絵画はどうなるのか? 絵画をめぐるひとたちはどうなっていくのか? そして意外な結末も。 確かに、割と安易なミステリーのようでもある。しかし、絵画の価値ってなんやろ? たかがゴッホ、されどゴッホ、それで何十億円か? あると思えばある、ないと思えばまったくないかもしれへん価値? しかし、本物を見れる人にはそれがわかるのか? その魔力とは? 金なのか? 絵の力なのか? 価値のわからんもん同士でゲームが成り立つのか? 色々考えるととても楽しい。

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最近読んだ本、「舟を編む」、「伯爵夫人」

三浦しをん、「舟を編む」 本を作る、特に辞書を編纂するという現場を舞台にした小説は初めてでそのこと 自体がとても新鮮だった。 ちゃらい系の軽い青春群像小説みたいなんとちゃうやろかと読み始めは危惧しながらだった。 確かにそういう傾向はありつつも読みながらぐんぐん惹きつけられるところもある 面白い本であったと思う。 玄武書房という出版社の編集部で「大渡海」という国語辞書を編纂すると言う仕事を もう何年も続けている編集者にもまだ先が見えない。そんな中で編集者にもとうとう 定年退職が迫ってきた。この先どうなる? 誰か引き継いでくれるんやろか? そんなところへ営業部から馬締という青年が転属してきた。 役立たずを押し付けられたのか? 辞書はどうなる? 編集者や松本先生の心配を他所にこの青年は実に適任だったということが段々 わかってくる。桁違いの変わり者、真面目人間、こだわりマン、特に言葉に 対するこだわりがすごい。これは役に立つ。編纂作業は一気に捗るのか? それでもいろんな障害が発生する。紆余曲折がある。どうなることやら? 時たま、○○なる項目を辞書を引いてたり、ネットで調べたりしてるときに具体的な 説明なしに□□の項目を見ろと書いてあって、なんやこれはと思いつつ□□を 見ると○○を見ろと書いてあったりして、えらいムカつくことがあるけど、 辞書作りってそんな風にならんように願いたいといつも思う。 とても軽いけど、分かりやすい、楽しめる本だった。

蓮實重彦、「伯爵夫人」 なんじゃこれはってすぐに思ってしまう。えらい驚きに満ちた本だ。 元、東大総長が書いた本ということで、それなりに格調高いんかと思いきや、 そういう部分もないではないけど、なんと、いきなり濃厚なエロチック世界へ。 そして昭和ロマンのデカダン的な世界かと思いきや、もちろんそうでもあるんやけど 、戦場と軍人と貴族と政治家たちを巻き込んだ支離滅裂のグロテスクな世界へ、 ○○タマつぶしの荒技を秘技とする伯爵夫人とは一体なにものか? 東大進学を前にした二郎が巡り合ったのは怪しげな貴婦人? 二郎が女を誘惑したのか? 女が二郎を手玉にとっているのか? とりまく女たちも手練の技を隠さない。 空想から妄想の中へ、過去から現在へ、出たり入ったり、めくるめく想念の流れ。 わしのようなクソ真面目な人間にはとてもついていけない。 あっちかと思えばこっち、そっちかと思えば意外な事実が。 映画で出てきたようなシーンや主人公みたいな人たち、小説に出てきたような キャラクター、そういうのがこれでもかと駆け巡る。 「ばふりばふり」、「ぷへー」 いやはや、場面、場面に引きずり回されてやっとついていけるかという、荒唐無稽、 気宇壮大、なんやらようわからんエログロ小説? 官能小説? 格調高い小説? 企みがいっぱいのようである。 まあ、一度読んでみて下さい。 表紙もええではないですか。

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最近読んだ本、「今夜の食事をお作りします」、「我れ、美に殉ず」

遅子建、「今夜の食事をお作りします」 思わず胸がキュンとなるような悲しく切ない話であり、哀れを誘う話であり、 ユーモアたっぷりの話でもある。いずれにしろ心に沁みる話が多い。 もう大分前になるけどネットで何かの情報をググってたら、中国でもオーロラが 見えるとこがあるという情報があった。そのあたりには民宿があって、中国人の 旅行者に大人気なのだそうだ。是非一回行ってみたいと色々調べて見たんやけど 結局ようわからへんかった。 それが黒竜江省漠河県北極村 というところだった。 この小説の舞台になっているところだ。 なるほどこういうとこやったんかと実によくわかる。其の地の厳しく貧しい暮らしが 目の前に立ち上がってくるようだ。 夫がその村に役人となって居を定めたらしい。家を売って引っ越してこいという 連絡が入った。女は1壼のラードと家を引き換えて子供を連れて旅にでる。 考えられへんような過酷な旅だ。 上質のラードは漲る力を生み出す。子供もできた。そしてある日、壺の秘密がわかった。

夫と妻の心はとっくに冷え切ってしまったのだろうか? 夫はこれみよがしに他の女 との逢う瀬を楽しむ証拠を残して居なくなる。妻はいたたまれない。どうやって見返して やろう? 1人で街にでて見知らぬ街をふらつきあるく。そして、「今夜の食事をお作りします 」という 貼り紙に応じた男の家に行って飯をつくる。 なんと哀しい。 そして、何かが起こる。そして、本当の事が分かって来る。 そして、取り返しのつかないことが。 短編集 ラードの壺 七十年代の春夏秋冬 割り木の暮らし ロシア人の老婦人 今夜の食事をお作りします プーチラン停車場の十二月八日 ドアの向こうの清掃員 ねえ、雪見に来ない 黒竜江省漠河県北極村 、川の向こうはもうロシア人が暮らす土地だ。 オロチョン族の村でもある。 じっくりと読める良い本だった。

小嵐九八郎、「我れ、美に殉ず」 ある日、偶々テレビを見てたら久隅守景の特集をやっていた。 この人の夕涼みの絵は大好きやけど、四季農耕図みたいな絵も描いているようで それがとても気になった。しかし、詳しいことはようわからへん。ネットで色々 調べてるうちにこの本に行き当たった。 どんなんかようわからんけどまあ読んで見よう。 久隅守景、英一蝶、伊藤若冲、浦上玉堂の4人の数奇な人生を描いた本であった。 久隅守景 狩野派の塾頭でありながら、人生の巡りが悪く、破門の憂き目に、そして異端に走る。 そんな絵がええんよね。 英一蝶 将来を嘱望されながら、己のおごりか、運の悪さか時の権力のお咎めを受けて島流し、 それでもええもんはええ、誰かが分かってる。 伊藤若冲 […]

最近読んだ本、「李朝残影」、「深圳の夜」

梶山季之、朝鮮小説集「李朝残影」 副題に朝鮮小説集とある。梶山季之がこんな本を書いてるとは知らんかった。 エロチックな大衆小説系の作家やって勝手に思ってたんで図書館で表紙を見て びっくりしたまま借りて帰った。 朝鮮半島が日本の植民地だった時代の物語だ。占領下の日本人の暮らし、半島の 人の暮らし、お互いの関わり合いが生き生きと描かれている。 族譜:日本の占領政策の一環として創氏改名を迫った時があった。あらゆる人に 日本姓への改名を強制したのだ。しかし、何世代にも渡って族譜という一族の系譜 を守り続けてきた人にはそれは簡単には受け入れられない。民族の誇りがあるし 先祖に対する申し訳なさもある。占領政府はありとあらゆる手段でこれを揺さぶる。 娘の結婚相手も、娘も・・、本人もとうとう最後は自殺に追い込まれる。 李朝残影:男はある妓生 に心を奪われた。彼女は宮廷に伝わる高雅な舞をおどる 舞い姫なのだ。決して体は売らない。男は画家だ。その舞姿を絵にしようと彼女の いる料亭に通う。しかし、彼女には日本人に対する深い心の闇が。 絵はできたのか? 彼女にも悲劇の影が・・ 李朝の陶磁器をめぐる話も面白かった。

岩間俊卓、「深圳の夜」 深圳は昔、現役時代に仕事で良く行った。広州空港から新幹線で約1時間、香港 からもKCRという電車で約1時間、とても便利なところだ。しかし、経済特区 という特別な土地柄だけに中国全土から出稼ぎの人たちが集まって来ていて、 けっこう緊迫感のある空気も漂っていたような気がする。 パスポートを盗られた、デジカメを盗まれた、スーツケースを置き引きされた、等々、 危ない話は沢山聞いた。職業乞食の話も聞いたし、偽物デパートも大盛況だった。 そういうところで出張者や駐在員が飲み行く、或いはカラオケに行く、そういう 楽しみの場も沢山あって、そんなところに居てはる女性との悲喜交々、挙句の果ての 修羅場騒ぎ、いろんな話も通りすがりに聞くことができた。 そんなところで、ある男が、工場進出の責任者になるかたわらで、ねんごろに なったお姐さんのおねだりでカラオケ店を出す顛末をつづったのがこの物語だ。 小説としてどうこうより、この世界、ただただ懐かしい。 さて、カラオケ店は成功するのだろうか?

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最近読んだ本、「春に散る、上下」、「サバーイサバーイ」

沢木耕太郎、「春に散る、上下」 久し振りの沢木耕太郎の小説だ。ノンフィクションは沢山読んだけど小説は少ない。 けど、どっちがどっちでも面白かったらそれでいい。ノンフィクションとは又 違った世界が広がっててとても印象的だった。ノンフィクション以上に劇画的な 展開で最初は戸惑ったけど読んでるうちにどんどん引き込まれて行った。上下 2冊の本やけどあっと言うまに読んでしまった。

ある日、発作的に飛行機に乗った広岡はフロリダ半島の最南端に向かう。アメリカに 渡ってもう何十年にもなる。それなりの成功を収めたし、それなりのお金もできた。 しかし、こころのどこかに何かの風が吹いている。心臓発作で倒れたのをきっかけに その何かを見つける、見つめる心が沸き上がってきた。 日本へ戻ろう。 何をどうするかはわからんけどひとまず昔のジムを訪ねよう。昔の仲間を訪ねよう。 広岡は将来を嘱望されたボクサーだった。真拳ジムの四天王と呼ばれた男達は 今はどこでどうしてる? 日本で居場所を求め、彼らを探して話して居るうちに一つの形が見えてきた。 おいぼれボクサー達のシェア-ハウスを作ろう。 面白い。 そしていつか、1人のボクサーをチャンピオンにする夢が生まれるのか? この本でとても印象的なのはボクシングの試合の描写だ。まるでノンフィクション そのものだ。男達の闘いを目の前で見ながら実況を克明に綴るように、そのパンチの 動き、こころのざわめきを見事に立ち上がらせてみせる。 とても素晴らしい。 広岡はどうなる? 彼ら四天王はどうなる? 彼らの夢は適えられるのか?

岡崎大五、「サバーイサバーイ 小説 在チェンマイ日本国総領事館」 吉岡和喜は最近妻とうまくいっていない。なんとか起死回生をねらってチェンマイ の日本総領事館へ現地採用してもらえた。楽しいチェンマイ暮らしが始まる? しごとは邦人保護係。チェンマイに暮らす日本人は5000人を越えるそうだ。そして 老後の年金暮らしの居場所に選ばれる人気の場所でもあって、ロングステイの 老人達が沢山いる。その人達や偶々の観光客やいろんな日本人がいろんな事件を 持ち込んでくる。日々バタバタとその処理に取り組む暮らしもまんざら悪くもない。 しかし、どうも上司である副総領事の動きがおかしい。 きっと裏でなにかうさんくさいことに関わってるんとちゃうやろか? そう考えるといろいろな妖しいできごとも腑に落ちてくる。 なんとかしっぽをつかみたい。 しかし、ある日、事件がおきた。彼はえらいことに巻き込まれてしまったらしい。 そしてそれは上司の陰謀かもしれん。 なんとかしなくては。 果たして吉岡はどうなるのか? 事件は解決するのか? とても面白い。 この人の本は、添乗員シリーズとかでとても面白い旅の本として何冊か読んできた。 どうもタイの暮らしに精通してるみたい。 そやからかチェンマイに暮らす日本人達の暮らしぶりがとても生き生きと描かれて いて、前に旅行で行ったことがある、あああそこがそういうとこやったんかとか あのあたりがこんな風なんかとかいろいろ思い出されてとても楽しい。 ただの面白、どたばた劇というだけでなく読ませるところがあって良い感じだ。

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最近読んだ本、「デトロイト美術館の奇跡」、「香港パク」

原田マハ、「デトロイト美術館の奇跡」 この人の本の話を書くときはいつも、この人の本が出たらつい読んでしまうと いう出だしになる。そういうものだ。 どういうものかというとわしの大好きな絵の世界が生き生きと描かれているから なのだ。こんどはどんな絵にまつわる話なんやろか? どんな画家の生き様について の話なんやろか? 興味は尽きない。 で、今回は美術館が主題になっている。デトロイト美術館だ。 そう言えばかなり前にアメリカの自動車業界の調子がよく無いんで、ビッグ3の 根拠地、特にデトロイトでは深刻な雇用難が起きていて、まさかデトロイト市 のような巨大な都市が経済破綻しようとしてるというようなニュースが話題に なってた時期があった。そんな時期の話のようだ。 デトロイトの自動車企業で働いていた老齢の男がある日リストラに会う。 もう何もやる気がない。健気な妻が、私が働くから大丈夫と明るく言ってくれた。 その妻のたった一つの願い、時間ができたらあなたと美術館に行くのがこれ以上 嬉しいことはないわという言葉だった。 月日が流れて妻は亡くなり、男は年金暮らし、そんな中で男は妻の思い出を辿りに 美術館に通うようになった。 そんな美術館が閉鎖の危機に。 美術館を愛する市民はどうなるのか? 男はどうするのか? 絵画が、芸術が人を助けることができるか? 人を勇気付けることができるか? 胸が熱くなる話がここにある。

そういえば、某都市で、元某市長さんが、採算のとれない文楽なんか無くしたら とか、無駄に買い込んだ美術品のために美術館なんか必要ないんちゃうとか言ってた ような気がするけど、美術や芸術の役割って経済的なバランスシートとは絶対 違うんよねえ。 わかって欲しかったなあ。

李承雨(イ・スンウ)、「香港パク」 題を見て、著者を見ないで読み始めた。最初は香港が舞台の中国や香港的な話 かなって思ってたら全然違う。 メッチャ、シュールな短編集やと思う。 文学的にはすごいええ作品って評価されるんやと思うけど、理解力の低いわしには こころがざわつくわりには引き込まれるところが少ないような気がする。 韓国的な考え方ってこんなんなんかっておもわせるような描写がたくさんあるけど 韓国的な考え方って全くしらへんわしにはそことこがようわからんし、もひとつついて いけへんとこでもあるのだ。韓国に詳しい人やったらなるほどと思いつつその実態と シュールな表現を楽しむことができるんやろなあって思った。 香港パク どうにもならんダメ男がいる。職場でもドジばっかりやってる。家庭でも 見放されている。その男の口癖が、「いつか香港から船が来る。そしたら、 わしにも金が入る。きっとだ。わしにまかしといたらええんや。」 そんな感じだ。 果たしていつか、船が入った。 そして男はどうなった。 闇は深い。 他の短編は下記のよう、なるほどというのもあるし、入っていけへんのもある。 修行が足りんのやろうなあ。 宣告 首相は死なない 迷宮についての推測 […]

最近読んだ本、「中国奥地紀行」、「入蜀記」、「頑張れ大風呂敷旅行屋」

イザベラ・バード、「中国奥地紀行」 今回の雲南旅行の仲間から教えてもらった本だ。恥ずかしながらこの本の存在を 知らなかった。早速読んでみた。

19世紀末の有名な旅行家の有名な旅行記だ。イギリス始め列強が、あるいは 日本が清国を蝕んでいた頃の話だ。 租界にはそれなりに外国人が沢山いたけど奥地に行ったら居たとしても宣教師だけと 言う頃だ。そんな時代に女1人、勿論案内人みたいな人を雇ってのことではあるが たった1人で奥の奥までどんどん旅をするという凄まじさには思わず心打たれる。 持ち物はわずかな着替えとカレー粉(これが必須らしい)、カメラと現像道具。 なんとすごい。 コースはこういう感じ、

上海から杭州を通って鎮江へと長江を遡っていく。

このあたりは行ったことがあるんでとても興味深い。それからどんどん長江を 上って行くんやけど、もう今では河の流れも変わってるし、ダムもできて、この 頃のような旅もできへんし、こういう町も無くなってしまってると思う。 でもこの当時は四川省までの河の旅は凄まじかったのだ。急流渦巻く中を、あるいは 手で漕ぎあるいはロープで引っ張り、天気が悪かったら何日も停滞するし、 時には人も荷物も破損して流される。こういう風景はいまではもう見られない。 残念だ。そして行く先々で写真を撮って現像して残している。こういう記録は とても貴重だとおもう。こう言う旅を延々と続けてとうとうチベットの国境に 入り込むところまで行ってしまうという強烈さだ。 日本、韓国旅行記も読まんとあかんのだ。

陸游、「入蜀記」

上の「中国奥地紀行」に参考文献として出てくる本だ。わしの大好きな詩人が 四川省に赴任するときの紀行文で、四川省までは上記と殆ど同じコースを辿っている。

ただし、陸游は政府の偉いさんであるし、高名な文人であるんで行く先々で、 そのちの偉いさんの歓迎の宴があるし、船や宿泊にしても上記とは段違いの 旅になっている。そやから旅の冒険談というよりは、寄り道した土地、土地に まつわる先人の詩歌や墨跡についての知識が紐解かれるのをたどるというのが 楽しみになるということで、また、別の興趣を楽しみながら本を読むことができるのだ。 どちらも同時に読むととても面白い。

宇土寿和、「頑張れ大風呂敷旅行屋」 20代の若さで仲間たちと旅行会社を立ち上げた。他所と同じことをやってたんでは ビジネスはとても太刀打ちできない。 特別な旅行を企画する会社にしたい。 ある日、健二はある日、全国コンクールで金賞をとった女子高校マーチングバンドと 出会う。そうだ、彼女たちを世界に行かせてあげたい。 しかし、世界大会はどこであるのだ? そんなところにいきなりエントリーできるのか? 正規の招待状はもらえるのか? 予算もないのに旅行費用はどう工面するの? 最初から出来へんと諦めてしもたら何もできへん。 やってみたら方法が見つかるかも? さあ、果たして世界コンクールに出場できたのか? 次はアフリカへ? 夢は広がる。 軽くて、愉快で、とても面白い。 旅の本としてはかなり物足りない。

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最近読んだ本、「橋を渡る」、「アガサ・クリスティと14の毒薬」

吉田修一、「橋を渡る」 「春ー明良」 明良と妻、極、普通の夫婦の暮らし。ある日不思議な訪問者が、それに続いて 不思議な届け物が。そして、もしかしたらストーカー? そして甥の孝太郎にも事件が。穏やかな暮らしがざわついてくる。 「夏ー篤子」 篤子と夫、都議会議員ではあるが平凡な普通の暮らし。しかし、旦那の動きが どうも怪しい。セクハラ野次議員てもしかしたら彼とちゃうやろか? こっそり訪ねてくる友達は何者や? もしかしたら賄賂受け取ってる? そして彼女の周辺もざわついてくる。 「秋ー謙一郎」 謙一郎はやりてのテレビ記者だ。婚約者をおいて、民主化運動真っ只中の香港へ 飛ぶ。しかし、どうも彼女の様子がおかしい。 彼の周辺がにわかにざわついてくる。いったい何が起きたのだ。 「そして冬」 おやいつのまにかSFの世界に入ってしまったのか? すべてのざわつきの果ての果てがどうなったのか? 過去と未来は交錯するのか? そしてエピローグ。

この人の本は嫌な人の書き方がとてもうまいと思う。良い人だったはずがいつの間にか 嫌な人に、もう読みたくないわって思うほどざわざわ心の中を逆なでされたあげく やっぱり読むのをやめられへん。 すごい作家なんやろなあ。

キャサリン・ハーカップ、「アガサ・クリスティと14の毒薬」 アガサ・クリスティは大好きだ。事件と謎解きだけではなくて、人間の裏側に 蠢く欲望や嫉妬、その他もろもろ、人の世の哀しさ虚しさを生き生きと描いて 見せて、それでも時にはポアロさんが現れて真相を解明し、悪をえぐり出して 希望もあるではないかと思わせてくれるからだ。 犯罪の仕掛けは多種多様でとてもよく考えらえているけど中でも毒薬の使い方は 素晴らしい。間違いのない専門的な知識が駆使されているようだ。実際、クリスティは 薬物を扱う仕事に従事してたことがあるらしい。この本はそれらの毒物が どのような知識でどのように使われたか、本当にそんなふうに作用するのか 様々な角度から解説している。改めてクリスティの面白さを確認させてくれる本だと 思う。 A:ヒ素 殺人は容易だ B:ベラドンナ ヘラクレスの冒険 C:シアン化物 忘れられぬ死 D:ジギタリス 死との約束 E:エゼリン ねじれた家 H:ドクニンジン 五匹の子豚 M:トリカブト パディントン発4時50分 N:ニコチン 三幕の殺人 O:アヘン 杉の柩 […]