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最近読んだ本、「風神雷神、風の章、雷の章」、「呑み鉄、ひとり旅 乗り鉄の王様がゆく」

柳広司、「風神雷神、風の章、雷の章」 これと同じテーマで辻邦生の「嵯峨野明月記」を読んだことがある。格調高い文学の 香りがする文章やったような記憶があるけで、こっちはとても読みやすい。 主人公は俵屋伊年、後の俵屋宗達だ。 ただのぼんやりボンに見える扇屋の老舗俵屋の後継にはもしかしたらとてつもない 画才があるのではないやろか? 安芸国、厳島神社にある平家納経の修復で驚くべき才能を見せたのだ。 そして、盟友角倉与一の企画で、紙屋宗二が極上の紙を用意し、俵屋伊年の絵に本阿弥光悦 が文字を入れた前代未聞の手書き印刷本、「嵯峨本」ができるや絵師として京の街の 寵児となってしまった。 本阿弥光悦の美への執念と鋭い感性が彼をどんどん高みに連れて行く。 そして烏丸光広との出会い。融通無碍の境地。 世界がどんどん広がる。縛りはなにもない。ひたすら美の世界を彷徨う。 てな具合に、宗達の世界と彼をとりまく、京の文化の爛熟の気分をわかりやすく立ち上げて見せる。 とても読みやすくて面白い。

芦原伸、「呑み鉄、ひとり旅 乗り鉄の王様がゆく」 わしは鉄ちゃんではないけど鉄道の旅はとても好きだ。特にローカル線各停の旅は 気に入ってる。それは鉄道の旅の風情もあるけど、青春18切符を使って安く旅が できるからだ。そやから安いんであれば特急でも新幹線でもええんやけどそうは いかんからしょうがない。 18切符の場合は、1日で出来るだけ遠くへ行きたいんで、乗り継ぎ作戦が肝心になる。 1分、2分の乗り換え時間を次々にこなして息つく暇もない場合も多いんで、長丁場やから 座りたい、爺さんやからトイレのある車両が近い方がええなんて考えると、へたしたら 格闘技に近いんちゃうやろかと思たりすることもある。 走ってる時は鈍行やからのんびりゆっくりできるけどどっかであてもなく降りて 興趣に浸るなんてことができへんからがさつで無粋な旅になりかねへん。 それはそれでわしは楽しいけど、かなわんなあって思う人も多いとおもう。 この本では、旅のプロ、鉄ちゃんのブロが趣深いところを上手に旅しはる。 ちょっとノスタルジックが過ぎるんちゃうのと思わんでもないけど、思い出と共に 走る鉄ちゃんの旅はええんかもしれん。 乗った路線もあれば、乗ってない路線もある。 乗った路線で思い出深いのが秋田内陸縦貫鉄道。夕暮れ時の列車に学校帰りの高校生たちが 乗り込んできて、停まるごとに少しずつ降りて行って、とうとう誰もいなくなって 雪の角館に着いた。 乗りたい路線は南阿蘇鉄道、豊肥本線の災害復旧工事が終わったら是非行ってみたいと 思っている。

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最近読んだ本、「HHhH プラハ、1942年」、「真ん中の子どもたち」

ローラン・ピネ、「HHhH プラハ、1942年」 これはすごい小説だ。傑作だと思う。一気に読んでしまった。 ドキュメンタリー風の小説には「これは小説であって事実とは異なる場合があります。」 という但し書きがあるけど、どうやらこの作品では事実を細部に渡って追いかける ことを旨としているらしい。 いつどこにいた。その街角はどんな様子だった。その時どんな服を着ていた。 誰と会った。なんの話をした。 徹底的に資料を集める。 通常は「不明な部分も含めて自分なりの人物像を創り上げる。」もんやと思ってた けど可能な限り、事実を積み上げるのだそうだ。 そして、そこから浮かび上がる人物と事件には迫真の緊張感が生まれるようだ。 「金髪の野獣」と呼ばれる男がいる。ナチの政権下で秘密警察、ユダヤ人弾圧の 部門でどんどん頭角を現し、ついにはヒムラーの右腕になってしまった。 男の名前はハインリッヒ、かれがどこまで残虐非道で、冷酷な悪魔のような男で あるのか、いかに効率よくユダヤ人を狩り出し排除していくか、その動きを克明に 追う。 舞台はチェコのプラハ。とても美しい街だ。 わしも一回行ったことがある。有名なカレル橋を挟んで王宮跡と市街地に別れる。 どちらに行っても中世ヨーロッパの香りを漂わせるとても印象的な街であった。 是非もう一度行きたものだ。 ラインハルト・ハイドリヒ はとうとうこの街で強権の中枢になってしまった。 そして追い出されてロンドンに亡命政権を建てた側では、密かに彼の暗殺を狙う。 選び抜かれた2人の戦士がプラハに派遣される。 どうやって? そしてレジスタンスの助けを借りて暗殺計画が着々と進むのか? 果たして襲撃はあるのか? 成功するのか? 方法は? 彼らはどうやって現場を離脱するのか? 成功の公算は? 息詰まる時間が過ぎていく。 読む方も息詰まる。 とても良い感じの緊張感だ。 素晴らしい。 因みに「HHhH」とは「ヒムラーの頭脳はハインリッヒと呼ばれる 」の 略語らしい。

温又柔、「真ん中の子どもたち」 前にこの人の「台湾生まれ日本語育ち」と言う本を読んで好感を持っていたんで また読むことにした。 中国を旅行してたり、日本で知らない中国人と話する機会があったりする時に、 それが親しい間柄ではなくて、街角の食堂だったり、移動中のバスの中だったりで 殆ど通りすがりというシチュエーションで、「あんたは南方の方に人かね?」と 聞かれたりすることがある。昔は、意外と中国語が話せるやん、もうちょっとやねと 言うくらいの褒め言葉やと理解して喜んでたんやけど、もしかしたら、「あんた中国語 下手やねようわからんわ」というニュアンスに近いんちゃうやろかと最近は思うように なってきている。 つまりかなりバカにされてるということ。 そんなことはどうでもええとして、 琴子は台湾人の母と日本人の父の間で生まれ、日本で育った。つまり、台湾語と日本語と 中国語の世界で暮らしている。 […]

最近読んだ本、「四時過ぎの船」、「湖畔荘」

古川真人、「四時過ぎの船」 これほど淡々として、おだやかなゆるい時間の中にいて、何と切ない、哀しい物語なのか。 「今日ミノル、四時過ぎの船で着く」 吉川佐恵子は自分が書いたノートを見た。 あらもう4時、早く迎えに行かなくては。ミノルは1人で来るの? 家族と来るの? いや、これは今日のことではない? いつのこと? 美穂から電話が来たのは昨日のはず? 島の古い家でひとり暮らし続けるうちに思い出すばかりの生活になってしまった。 机やテレビ、棚や仏壇。見た瞬間何かに繋がったような気がするけど、いつか またぼんやりしていく。 ヒロシはなぜ目が見えない。 ヒロシとミノルが仲良く助け合ってくらしている。 でも一体これからどうなる?

もうなくなったけどわしの母親も晩年はこんな感じ、どこがどう一緒ってステレオタイプに 整理はできへんけど、時々湧き起こる古い記憶と、プラマイ30分くらいの生活感の 中でとまどいながら頭のどっかで一生懸命つじつま合わせをしてはったんとちゃうやろ かと思うと、とても哀しくなる。老いとはなんなのか、認知症や認知症的なものと おれあいながら暮らすことなんてできるのか?

淡々と老女の暮らしが語られるそのことがとても切ない。

ケイト・モートン、「湖畔荘 上・下 」 これは面白い。イギリスのコーンウォールの田園風景が目の前に見えるようだ。 行ったことないけど、見て来たように言う。 セイディ刑事は納得できない。確かにやりすぎた、ルール無視やったかもしれんけど、 母親が子供を残して忽然と消えるはずがない。何か事件があったはず? でも、今は出勤停止、祖父の家があるコーンウォールで謹慎生活をせなあかん身だ。 しかたなくジョギングしてたら不思議な屋敷を発見。事件の匂いがする。裕福で 幸せの絶頂にあった一家が突然消え、湖畔荘という屋敷だけが残ったという。 70年前に赤ん坊がなぜ消えたのか? 一体何が起こったのか? 両親はどうなった? 姉たちはどうしてる? セィディ刑事はこの事件にのめり込み始めた。ただの暇つぶしではない、何か 感じるものがある。この謎はきっと解けるはずだ。姉の1人はロンドンにいて、 高名な推理作家になっていた、セイディはこの姉、アリス・エダヴェイン に 連絡をとろうとする。きっと何か知ってるはず? 母、エリナ・エヴァダインが鍵を握っているのではないか? 根気よく調べるうちに事件は少しずつ明らかになっていく。そして湖畔荘の秘密も 分かって来る。どうして赤ん坊が消えることができたの? 何かがおかしい? どこかで何かが食い違ってる? そして意外な事実が次々に。 豊かな自然と魅力的なマナーハウス。そんななかで手に汗握りミステリー。 とても面白い。

焦って本を読んで返してしまったんで写真とってなかった。

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映画、「笑う故郷」を見た。

とても素晴らしい。腹を抱えるほど面白くて、しかもシニックでビターな映画だ。 アルゼンチンの田舎の暮らしが長閑どころではないところがとてもいい。 この映画はテアトル梅田で上映されている。ロフトの地下なんでとても便利だ。 しかも、この映画館もネット予約できるんでそれも又とても便利だ。行く前から チケットは確保できてるし座席も確保できてる。時間に余裕を見ておく必要が ないんでとてもいい。 それで今回初めて気がついた事。 マイナーそうな映画のわりには開演を待つ人が多くて、時間がきたらどどっと入る という珍しい状況の中でお客さんの動きを見てたら、入り口の壁際にある何かを 取りに行く人が多い。毛布でも借りに行くんかなって見てたら、座席に敷く補助 シートみたいなやつだった。あれって、前の席の人の頭が邪魔なときに自分の座高を 自動的にアップする道具なんかと気がついた。なるほど小柄な人や座高の低い人 には良い考えやなあって感心した。わしは背が低いけど座高は高いんで必要ない かもしれんけど時々前にとても背が高い人とか大きな帽子をかぶった人とかが 座りはるとよう見えへんから右サイドか左サイドに首を伸ばして見んならんときが あってその時は首が疲れる。 今回は前に座る人がいなかったんで望外のラッキーだった。 ダニエル・マントバーニはアルゼンチン出身の作家だ。彼はノーベル賞受賞の演説で この賞をもらうのはうれしいけど、わしの進歩を停滞させるものでもあるなんて見栄を きるようなちょっと独自なとこがあるおっさんだ。それでも巨匠なんで人気絶頂、 いろんなパーティ、イベント、講演会などなどご招待はひきもきらない。 しかし、どれもこれも行きたくない。 ところが、そんな中にアルゼンチン、ブエノスアイレスの郊外にある生まれ故郷、 サラスから便りが来た。名誉市民の称号を与えて栄誉を讃える歓迎会の催しをしたい というのだ。 もちろん言下に断る。とおもいつつも何がそうさせたのか? 遥か昔の何かが、 懐かしい思い出が、こころをよぎったのか、つい行く気になってしまった。 そして、市長の出迎え、大げさな式典、講演会、わけのわからん美術展の審査員、 いろいろ盛大に準備されてる。気が進まんでも来てしまったら出らんとしょうがない。 歓迎されてるような微妙にずれてるような。 昔の恋人との再会。 旧友との再会。 うれしいような、何かずれて行くような。 彼の作品はほとんどが故郷の出来事がネタになっているようだ。喜ぶ人もいれば 不興に思う人も。 彼はボルヘスではない。 だんだん事態がややこしくなる。 そしてとうとう事件が。 美女と羊の脳とノーベル賞作家。 さてさてどうなることやら、すべては故郷の荒地の闇の中へ? すべては彼のペンのなせる技か? とても面白い。

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最近読んだ本、「ツバキ文具店」、「ホテルルワンダの男」

小川糸、「ツバキ文具店」 この人の「食堂かたつむり」と言う本を前に読んで面白かったので再び挑戦することに。 鎌倉のある裏町の裏通り、「ツバキ文具店」と言う名の代書屋さんがある。 若い娘がやるような仕事ではない。何故? なるほど、先代、彼女のおばあちゃんが 突然亡くなって、一旦は閉じようとしてた店をぽっぽちゃんこと、鳩子がつぐことに したのだ。何故突然? それには深いわけがある。 そして始めた代書屋さん。今時そんな客おらへんやろ? それが意外といるらしい。贈答の挨拶、昔の恋人への消息、復縁を願うのではなく 元気だよってしらせるだけの微妙な手紙、思い余った縁切り状、 借金の断り状。 それぞれに物語があって登場人物がいる。裏町の生活模様が生き生きと立ち上がる。 そして、心温かい人たちの何気ない心遣いがとてもいい。 もう忘れてしまった紙とペンの世界、とても懐かしくなる。 わしも今では、手紙を書く事なんてほとんどない。あってもパソコンで文章を打って 印刷したのを出すくらいだ。年賀状もそのとおり。手で書くことを疎かにするうちに 漢字をどんどん忘れてしまう。しってたはずと手が動いてもはたと止まったら先に 進まへん。 たまにはと万年筆をとりだして書いてみる。 なかなかええもんだ。インクももっと違うのがあったらええのに、便箋や封筒、 モノを書く紙、いろいろこだわったら楽しいやろなあ、 その時は思ったけど、しばらくしたらまた忘却の彼方へ。 文化が心に根付いてない。あきませんなあ。 物語の中では、ええっ? うまいこと行きすぎやん、ありえへん。 とか、それはないやろ? とか、勝手にやってええのん? とか、いろいろないではないけど、そこがフィクションの世界、楽しく読ませて 頂いた。

ポール・ルセサバギナ、「ホテルルワンダの男」 大分前に「ホテル、ルワンダ」って映画を見たことがある。内容がそっくりなんで 多分この本が原作なんやろって思う。 ポールは真面目で勤勉なホテルマンだ。ホテル、ミルコリンの副支配人で手腕を 認められ、ホテル、ディプロマットの支配人をまかされるようになった。 そんなある日、ルワンダを最悪の悲劇が襲った。フツ族がツチ族を襲ったのだ。 アフリカで民族間の争いが起こるといつも心がざわつく。なぜ、どんな力のバランスで なんのために、得るものは何? 失うものは? わしらの貧弱な想像の外にある。 漆黒の闇と精霊の世界、部族と部族、そして押し寄せる欧米やアジアの資本と価値観、 何がどうなってるんか? 簡単に決めつけられへん。 ルワンダでもフツ族とツチ族の諍いが続いていた。危険なバランス。 そしてある日、フツ族による殺戮が始まった。昨日まで仲良く暮らしていた隣人が鉈を持って 襲ってくる。足の腱を切って逃げられなくしてから手足を切り、残虐に少しずつ殺す。 人はなぜそこまで非道になれるのか?わずか100日間で80万人殺された。 毎日、ラジオで敵を殺し尽くせと叫んで居る。 ポールはフツ族ではあるが家族にツチ族がいる。ルアンダにはそういう人が多い。 家族に危険がせまる。友人、知人にも危険がせまる。 意を決して、皆でホテル、ミルコリンに立て篭もろう。 とりあえずは何故か安全だった。襲撃の対象にはいまはなってない。 そしてポールの死に物狂いの活躍が始まる。 […]

最近読んだ本、「神秘大通り 上、下」、「籠の鸚鵡」

ジョン・アーヴィング、「神秘大通り 上、下」 この人の作品はいつ読んでもとても面白い。新作が出るのを楽しみにでたらすぐ 読むようにしてる。決して期待を裏切らないのがすごいところだ。 フワン・ディエゴ はフィリピンに向かっている。彼はスラム出身の作家だ。 メキシコシティ、オアハカの街の裏通りのスラム街で生まれ育った。母は掃除婦兼 娼婦、父はわからない。妹のルペは未来が見えるらしい。 どういう未来か、自分の命がどうなるか? 兄が作家として成功するのか? そのためにはライオンの檻に入るのはだれか?調教師イグナシオをどうした。 スラム街はダンプと呼ばれる兄弟はダンプキッドだ。どこから迷い込んできたのか ぺぺ修道士、トランスヴェスタイトのフロール、エドワード・ボンショー。 聖処女マリアの鼻はどうなる? フワン・ディエゴは飛行機の中だ。ダンプキッドの暮らしは夢の中なのか? では彼の片足はどこで不具になったのか? 現実と夢の中を行ったり来たりするのはベータ遮断薬のせいなのか? 母ミリアムと娘ドロシーと何故しりあったのか? バイアグラを使ってやりまくったのは 夢か現か? 母と娘は実在の人物なのか? 果たしてスラムで死んだ元軍人青年の故郷を訪れることができるのか? めくるめくような話の流れにぐんぐんと惹きつけられて息つく暇もないほどだ。 気いつけんと読んでるわしまで夢の世界に入ってしまいそうだ。 時間も空間も想念もぶっとびまくって気がついたら終わってた。 おそるべし。

辻原登、「籠の鸚鵡」 梶は和歌山県下津町の役場の出納室町だ。おやいきなり知ってる町やんか、わしの 故郷海南の隣だ。真面目な梶は酒も女も遊びもしない、それがふとした事で和歌山市の 飲屋街、アロチで一軒のスナックへ。これまた中学、高校時代を過ごした和歌山が でてくる。丸正デパートがあってその向かいにブラクリ町の商店街があって、そこを 突き抜けた先に小さな一杯飲み屋やバーやスナック、妖しい店や妖しくないみせが ひしめく飲み屋があってそこをアロチと言う。こんなん本を読み直さんでも書ける くらいようしってる。行ってたわけではないけどね。 ある日梶のもとへ手紙が届く、カヨというスナックの女からの誘いの手紙だ。仰天するほど生々しい エロチックというよりはセックス行為そのものの淫らな誘い文句がならんでいる。 あっという間にその気になって、あっというまにあるあるパターンで公金使い込み、 女に貢いでどうにもならんようになるんではないか? こんな女に男がいないはずはない。やっぱり不動産屋くずれの元夫、今の男はヤクザだ。 そしてヤクザにも試練が。 抗争相手の親分を殺せるのか? そのあと逃げおおせるのか? どうやって? 梶はどうなる? 梶の貢いだ金は? 熊野古道を彷徨うのはだれだ? 最後は補陀落浄土へ向かう道しかないんとちゃうのか? 知ってるとこばっかりが舞台やと異様に興味が引きずられる。 とても面白い。

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最近読んだ本、「ジャパントリップ」、「スノーマン」

岩城けい、「ジャパントリップ」 オーストラリアにあるローランド・ベイ・グラマー・スクールでは毎年数日間 日本にホームステイ旅行をする。日本からもオーストラリアに来る。交換留学だ。 初めてのニッポン、オーサカで、ガイコクゴを使う。 楽しい。けど緊張。 迎える大阪のお母さんたち。どうしよう。できるだけ普通に・・・、できるかしら。 まるでSNSのレビューのよう、あるいはブログの一場面のよう。エッセイのようで やっぱり小説。ガイジンのこどもの目線で物語が語られる。 とても面白い。 慣れない食べ物、慣れない暮らし。子どもにも葛藤はある。 電車通学自体が大冒険。 何年か前に、アメリカ、シアトルの近くベリンハムって街でグループ展をやった ことがあって、その時に近郊の中学校で墨絵の描き方を紹介する機会があった。 下手くそな英語、こどもに教えるって? 文化の違いから? いろいろ戸惑いがあるけど楽しかった。子供の好奇心が刺激になる。 その後、オーストラリアのダーウィンにもグループ展で行く機会があって、 やっぱり近郊の中学校で同じような機会があった。 下手くそな英語、こどもに教えるって? 文化の違いから? 戸惑いながらも、いい勉強になった。 個人の暮らしで異文化がふれあうってとても良いと思う。

ジョー・ネスボ 、「スノーマン」 ハリー・ホーレはオスロ警察のベテラン警部だ。優秀であるが、問題人物でもある らしい。むかし、有名な連続殺人事件を担当してマスコミに話題になったこともある。 ある日、女性が忽然と姿を消した。その後には雪だるまが。 何かおかしい。 そんな事件が多すぎる。 そして、奇妙な殺人が。 あるひ、ホーレの元に手紙が届いた。昔の事件と関係があるのか? ホーレの元には新人の刑事が配属されてきた。美人で優秀だ。 2人には徐々に犯人を追い詰めて行く。 本当に? 不思議な病気の男が見つかった。不治の病にかかった男だ。 彼は事件に関係があるのか? ハリーの身辺にも疑惑が? 彼自身か? 誰か知り合いが怪しいか? 様々な問題を含んだまま、事件は二転三転していく。 とても面白い。 冬のオスロの街が生き生きと立ち上がる。行ってみたい。 果たして雪だるまを作ったのは誰なのか? 真犯人は誰なのか? 犯人の企みとは? ハリーはアルコール依存症を断ち切れるのか? 飲まんとやってられへんことばっかり・・?

 

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最近読んだ本、「誰も知らない熊野の遺産」、「アノニム」

栂嶺レイ、「誰も知らない熊野の遺産」 こないだ熊野古道の小辺路を歩いた。緑が蒸れ出すような深い森の中を登ったり 降ったり するような旅だった。昔から紀州の山の中は好きやけどやっぱりええなあって 思った。 百夜月 熊野の山の奥、川向こうに小さなお寺があった。そこで修行する若くて美しい尼僧に 会いたいと若者が月の光をたよりに舟で渡ろうとするが99晩ことごとく失敗する。 そしてとうとう百晩目、今日こそは、でもダメよと母に諭される。 尼僧は月の光に守られているのだ。 そんな民話の場所がある。とてもええではないか。しかし、今は簡単には渡れない。 その尼僧とは、高貴な血筋の方なのか、民話の謎をさぐる? 九重 和歌山県には不思議なことに厳島神社がいくつもある。 なぜなのか? そして森の中に広大な棚田の跡が。雲海の中に見え隠れするそうだ。 どうしてこんな暮らしがなくなってしまったのか? 幻の玉置街道 熊野古道で有名な玉置神社の表参道はもうなくなってしまったのか? 昔の賑わいはなぜなくなったのか? 単なる熊野古道歩きの情報発信というだけではなくて、そこにまつわるいろんな 暮らしやそれにまつわる民話や伝説、その意味を探って山の奥深くまで訪れ、 印象的な写真をたくさんとっている、そういう本だ。 竹筒 花井 三十三間堂 前鬼 徐福 那智の火祭り 太地のクジラ ・・・・ これを読んでると熊野の山で行きたいところがいっぱい出来た。 今では、紀州熊野の山も乾いてしまった。ポタポタ木からおちる山蛭もいてへんし、 山姥や精霊も見当たらへん。それでも山道のここかしこには心が引き締まるような 気持ちがするような場所がたくさんある。 そういうところへ一杯いってみたい。 体力をつけて頑張らねば。

原田マハ、「アノニム」 面白いミステリーだ。この人の作品は絵画あるいはその作者が主題になってるんで 内容にかかわらずつい読んでしまう。時には感動するし、時には心惹かれるし、 ときにはチャラさに驚いたりする。 これはどうなんやろ? 時は香港の学生たちによる民主化運動の最高潮。 そんな時に香港で壮大なオークションが開催されることになった。 目玉はアクションペインティングの世界を切り開いたジャクソン・ポロックの 幻の作品、「ナンバーゼロ」らしい。 オークションを主催するのはサザビーズ、そこの花形オークショニア パトリック・ダンドランが采配する一大イベントなのだ。 そして、今まで狙った獲物は合法、非合法にかかわらずどんな手段を使ってでも 手に入れて来たという悪魔のような黒幕がいる。 さて、その黒幕ははたして、「ナンバーゼロ」を手にいれることができるのか? 謎の集団アノニムとは何ものなのか? 人たらしの名人? […]

最近読んだ本、「サラバ 上、下」、「母の記憶に」

西加奈子、「サラバ 上、下」 これは異色というか、変わったというか、馴染みにくいというかなんとかく微妙な 感じを抱きつつ読んでいた。真面目なようでチャラいようでやっぱりチャラいんと ちゃうやろか? 舞台はいきなりイランから始まる。永遠の都テヘランだ。イスラム紛争で激動の街でもある。 父の転勤でこの街で暮らすことになった圷(あくつ)歩の少年時代。親友もできた。 楽しいことはいつまでもつづくかと思われた頃、突然の別れ、今度は日本に戻る。 美しくて優しい母はなぜ父と仲が悪くなったのか? 父は一体何をしたのか? 母はどうなってしまったのか? とてもエキセントリックな姉、貴子はなぜ、 サトラコヲモンサマ を讃える道に 進むのか? サトラコヲモンサマ を生み出したおばちゃんに誰もが心を救われたはずなのになぜ? エジプトへ、又、テヘランへ、姉は巻貝になってしまうのか? 母はなぜ勝手に幸せになりたいのか? 父はなぜ、そこまでストイックなのか? 壮大なようで波乱万丈なようで、都合よすぎるようで、面白いけど、馴染めない。 ジャスミン革命の時代、アラブの激動の時代だ。それなりにワクワクするけど、 せっかくわしが見たこともないアラブの世界に連れて行ってくれるんやったら、 その地の人と暮らしがもっともっと立ち上がるような気分の中にわしを誘って行って 欲しいなと思った。 とても面白いんやけど何か不満。

ケン・リュウ、「母の記憶に」 普段あんまりSFは読まへんのやけど、前にこの人の「紙の動物園」を読んで、 とても良かったんで、この人の本を読むのを楽しみにしていた。 この人の本には、いつもわしの知ってる或いは知らない漢詩や説話、名文が でてきて、なみなみならぬ完成と素養を思わせられてしまう。 今回もとても素晴らしい短編集だ。 烏蘇里羆 満州の極寒の荒れ地に幻の烏蘇里羆(ウスリーひぐま)を捉えにきた帝国陸軍の ロボット軍団。なぜかこの人の小説のなかではいつも日本帝国は滅びてなくて 健在だ。そして今や戦士も馬も戦闘ロボットだ。蒸気機関とメカを巧みに操って自由自在、 無敵の戦士だ。魔性の烏蘇里羆を待ち受ける。 しかし、魔性の熊の方が何枚も上だ。荒唐無稽のSF話のようでいて、自然の神秘や 恐ろしさに対する畏敬や心の葛藤、苦しみ、様々な人間的なものが心を打つ。 草を結びて環を銜えん 昔、中国、大明国末期の頃、北方の異民族、後に清という国をつくる民に、侵略されて 南の大都会揚州で起死回生の大戦闘があった時に負けた明側の兵士だけでなく 民もふくめて大虐殺されたことがあった。その時に我が身を捨てて、少しでも 愛するものや民衆を救えるチャンスを作ろうと身を捨てて秘策を施す賢い遊女、 侍女の雀が伝えるものは? 母の記憶に いつも母に会うのはわずかな時間だけだ。それは何故? 限られた命のなかで娘を見守ることができる唯一の方法とは? 時間と空間の流れのなかで命の儚さと生きることの悲しさが胸を打つ。 存在 いつかはこんな時代が来るんやろか? 遠隔介護って? […]

最近読んだ本、「幕末単身赴任 、下級武士の食日記」、「長春五馬路」、「大陸の細道」

青木直也、「幕末単身赴任 、下級武士の食日記」 昔、「花の下影」という本を読んでいたく感動したことがある。幕末の頃、 作者不詳ではあるが、美味しいもんを食わせる店の様子を描いた画帳で、 とても素晴らしい内容だ。今はデジタルカメラがあるし、スマホがあるから簡単 やけど、食い物屋や食い物を臨場感を持って絵に描くのはとても難しい。勿論 カメラに写すのもそれなりにテクニックは必要で上手に写した写真は魅力的なんやけど、 筆と墨の時代にこういう作品ができてるのは素晴らしい感性やと思った。 真似をしょうとおもうけどなかなかできへん。 この本は、画帳ではなくて日記だ。絵はないけど暮らしが浮かんでくるし、 料理の味が浮かんでくる。 酒井伴四郎は紀州藩の藩士、今で言えば中間管理職のちょい下くらいのポジションでは なかろうか。参勤交代のお供をして紀州から江戸まで単身赴任の旅だ。 わしも和歌山生まれやからこの時点で親近感バリバリになる。 江戸に着くまでの旅の話も面白い。台風、洪水散々な目に遭いながらも食うものは 食っている。そして江戸暮らし、下っ端役人は節約が必要だ。おいしいもんを 食うためには知恵を絞らんとあかん。上手に料理して、上手に食べる。 ところが、上司でもあり、何もせえへん叔父さんにいつも奪われてしまう理不尽にも くじけずにあかるく生きている。 実に面白い。こういう本はもっと発掘してほしいものだ。

木山捷平 、「長春五馬路 」 図書館の本棚に並んでいるのを、「長春」という言葉に惹かれて借りることにした。 長春は瀋陽よりさらに北にある。結構大きな都市だ。元の満州国の首都の時は新京って 呼ばれてた。行った時は、偽満州国って看板がデカデカとあって、9.18を忘れるなと 言うような看板もあったような気がする、とにかく日本に対する圧力が強そうな ところだった。終戦直後はもっと大変なとこやったと思う。戦争が終わるまえからも そのあとからも満州やら中国、朝鮮から日本に命からがら逃げ出す、その時の大変だった 話を、いろんな本で読んできたけど、ここではそんなんがまるで嘘のように、 戦に負けた後の満州の元首都だった街の街角の風景が淡々と描かれている。どうして こんなに飄々となれるのか、一旦地獄を見てしまったからなのか? 逃げ遅れた人たち、元々の満州の人たち、中国人、ソ連軍が攻めてくるのを怯える人たち、 共産軍と戦う国民党軍の人たち、様々な人たちと関わり合いながらギリギリの暮らしを 楽しんでるかのような爽やかささえ感じられるのがとても新鮮だった。 ある中国人の夫人の家に招かれる。成り行きでベッドに? しかし、酔い潰れて役にたたん。枕元に李白の詩、 日々酔いて泥の如し 李白の婦に為ると雖も 何ぞ太常の妻に異ならん 「又、あとで・・」って粋な手紙が添えられて・・ これはチャンスか? ハニートラップか? うらぶれた街角と人と人の描きかたがとてもよかった。

木山捷平 、「大陸の細道 」 「長春五馬路 」がすごい良かったんでこの本も読んで見たいと思った。 これも同じ気分が流れている。 敗戦直前の満州、長春の風景だ。 主だった人たちはもうすっかり引き上げてしまったかもしれない、逃げ遅れたかも […]

最近読んだ本、「音楽と沈黙Ⅰ、Ⅱ」、「ビニール傘」

ローズ・トレメイン、「音楽と沈黙Ⅰ、Ⅱ」 ある日、ピーター・クレアという美貌のリュート奏者がコペンハーゲンにある ローセンボー城にやってきた。デンマーク王クレスチャンに雇われて、彼の楽団に 参加して演奏するためだ。王の居室には奇妙な仕掛けがある。その地下で楽団が 演奏すると複雑な伝声管を伝ってその部屋で音楽が聞こえるという仕組みなのだ。 王はその仕組みがいたくお気に入りで、そのため楽団員は暖房の無い地下で震え ながら演奏をしなくてはならない。 一方王の妻、正式な妃ではない、キアステンは恋多き女性だ。淫乱と言っても良い ほどだ。王の隙をみて愛人、オットー伯爵とやりまくっている。 しかし、キアステンにぞっこんの王はまだ気がつかない。彼女の気を惹くのに 必死だ。 そして、ピーター・クレアには昔の想い人がいる。オフィンガル伯爵夫人だ。 しかし、何時の頃からか、キアステンの侍女エミリアに想いを寄せるようになった。 さて、舞台は出揃いつつある。 事態は段々とややこしくなっていく。 キアステンの浮気三昧が明るみになっていくのか? 彼女はデンマークに居られるのか? 王はどうするのか? 王にも悩みがある。デンマークの経済が怪しくなっている。起死回生の手立ては あるのか? ピーター・クレアのリュートの響きは国費改善のための売り物になるのか? ピーター・クレアとエミリアの運命はどうなるのか? 舞台はデンマークの田舎町のお城に? あるいはイギリスに? オフィンガル伯爵はピーター・クレアとよりを戻せるのか? 中世のドタバタ恋物語のようでいてそんなことはない。 長編ではあるけど一生懸命読んでしまう。 現代にある人間模様そのものが立ち上がってとても面白い。

岸政彦、「ビニール傘」 続き物のような、あるいは呼応するもののような、あるいは似て非なるものの ような、2つの短編に流れる孤独と切なさに胸が痛む。

ビニール傘 ガールズバーに勤めて、あるいは勤めるしか無くて生きてる女の子。 解体屋でアルバイトしながら暮らす若い男。 タクシー運転手との何と言うことのないすれ違い。 美容院勤めの暮らしの中。 全く普通の何と行くことのない暮らしが淡々と綴られる。 どこにでもありそうな大阪の下町の風景。 さしたるドラマチックも起承転結もなさそうな、日々の暮らしが流れて行く。 救いのないような閉塞感が漂う。いつも実を結ばない異性のとの交わり、 孤独だけが心に残る。

背中の月 システム開発の会社に勤める営業マン。仕事からも仲間からも心が繋がらない。 やりきれない孤独と闇を抱えているかのような暮らしをしているのではないか? 彼の心に繋がっているのは妻だけなのか? 妻は生きているのか? 二人の暮らしって? 静で淡々として何の物語りもないようで、じわっと切なく胸を打つ作品だと思う。 普通を普通に描ききる筆の力ってすごいんかもしれん。

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最近読んだ本、「罪の声」、「キトラボックス」

塩田武士、「罪の声」 これはすごい。一気に読んでしまった。あの「グリコ森永事件」をベースにした 推理小説だ。わし自身、実際の事件を振り返っみたら何もわかってないし、何もかも うろおぼえ、世の中の大事な事を直視しないで過ごしてきた数々のことがらの ひとつやなあって改めて反省した。 もしかしたら、本当にこうだったかもしれん。いかにもな話を空想してみると 言うよりは、綿密に記録を調べて調査と推理を組み立てているような構成だ。 まるでドキュメンタリー映画をみているよう、ぐんぐん惹き込まれていく。 グリコ森永事件はこの本ではギン萬事件だ。 今時珍しいテーラーの仕事を父のあとを継いで続けている曽根俊也という男がいる。 ある日、父の遺品の中から古いカセットテープを見つけた。その中には驚くべき 内容が録音されていた。「ギン萬事件 」の犯人からの脅迫電話の音声ではないか。 しかもその声はまさか、自分自身? 一体何故? どういう経緯で? 何故父の 遺品に? 調べずにはいられない。昔からの客であり、頼りになる知人、堀田の 助けを借りよう。二人が見つけていくものは? 阿久津と言う記者がいる。何か特別なスクープネタを拾えと命じられる。 「ギン萬事件 」をヨーロッパの誘拐事件と絡めて調べることから始まった。 阿久津が掘り出していくものは? 埋もれてしまっていた関係者を丁寧に探り、すこしずつ当時の事情に近づいていく。 曽根俊也は父の周辺から、当時の関係者を・・ 阿久津はイギリス、ハイネケン社長誘拐に興味を持った東洋人を・・ 少しずつ、埋もれていた記憶が明らかになっていく。 果たして誰と誰がどう関わっていたのか? 犯人は? あるいは犯人グループは? 何故? とてもおもしろい。 ほんまにこうやったんちゃうやろかという説得力まで感じてしまう。 さて、真犯人は誰なのか? 驚愕の事実が次々に明らかになる。

池澤夏樹、「キトラボックス」 ある日、国立民族学博物館、研究員の可敦は考古学者、藤浪から禽獣葡萄鏡を 見に行くよう依頼される。ウィグル出身の彼女にはもしかしたらこの鏡の出所に 心当たりがあるのではないかということだ。 そして、日本、中国、ウィグルをかけた鏡の謎が浮かんできた。彼らはこれを 解き明かせるのか? そして大嶺の山中から発見された剣とは? 剣に彫られた7つ星は? キトラ古墳と繋がりは? はるか昔、遣唐使に付いて唐の都に使いした貴人とは? そして、連れ帰った 胡人とは? 果たしてキトラ古墳に眠るのはだれなのか? 時空を超えて、空想と謎解きと冒険が始まる。 その頃、突然、可敦に危険が迫る。可敦とはいったい何者なのか? 文学的にどうのこうの言うより、話題がとても面白い。古墳の埋葬者は誰か? 副葬品は何故そこにあるのか? […]

最近読んだ本、「漂流」、「さすらいの皇帝ペンギン」

角幡唯介、「漂流」 この人の、「空白の五マイル」という本を読んだことがある。チベットの山奥深くにツァンポー峡谷 というところがあって各国の探検隊が挑むが後五マイルを残して踏破できていなかった。 そこには幻の瀧があるという。そこに挑む作者自身の冒険談だった。ただの自慢話的な 内容ではなくて、真摯で内省的なところもあるし困難に挑む姿勢も共感できて楽しく 読むことができたんで、早速手にとってみた次第だった。 これはある漁船がグアム島付近で操業中に遭難し、救命筏で乗組員と共に37日間 漂流した後に奇跡的に救助されたという物語から始まる。本村実船長と8人の フィリピン人船員全員が助かったのはなぜなのか? これは漂流そのものを追う物語ではなかった。 作者が取材のため本村船長の足跡を追ううちに次々と意外な事実にぶつかった。 足も伸ばせない狭い筏の中で9人もの男が食い物もなく水もなく苦しんでいる、 船長を殺して食おうと言う話まで出たそうな、そんな強烈な体験をして、もうこりごりの はずなのに本村船長は8年後に又船の乗ったのだそうだ。そして、そのまま忽然と 姿を消してしまったのだそうだ。 一体何が起こったのか?

そこまで彼を駆り立てたのは何なのか? 彼の出身地、宮古島、池間島に飛ぶ。 沖縄の漁師とは、宮古の漁師とは、池間の漁師とは? 南洋漁業の原点に迫る。 ミクロネシアの島々で大散財をしたおした彼らの隆盛はどこに行ったのか? 本土や、東南アジアの漁師たちが押し寄せる海域で彼らがそれなりのポジションを 確保できたのはなぜなのか? そして漁に出るしか生きられない彼らの性とは何なのか? 丁寧に徹底的に取材を続ける。克明に綴られたルポジュタージュは小説を読むような 牽引力がある。遭難船をただ追いかけるよりははるかに面白い。 フィリピン、台湾、中国、インドネシア、日本等々、南方海上の漁業の厳しさが 過去から現代にかけて立ち上がってくる。 とても面白い。

高橋三千綱、「さすらいの皇帝ペンギン」 こちらの冒険はメチャ、チャラい。面白くてアホくさい。けどまあ、たまには ゲラゲラ笑いながら本を読むのもええかもしれん。 あるいはこれを軽妙洒脱で感動的と言うのか。 小説家、楠三十朗は突然、南極に行くことになった。テレビ会社の開局記念番組 のドキュメンタリーで高名な作家がレポーターとしていくことになっていたのが ドタキャンされたので身代わりにオファーされたのだ。そこから、三十郎先生の ドタバタ旅が始まる。 まず着いたのが南極への基地となるチリのプンタアなレス、実はそこは彼の訳あり の地でもあった。前にこの地である女性と色恋のドタバタがあったというか、命を 助けられたというか、ややこしい思い出があるのだ。奇しくも彼女の知り合いに 巡り合うことができたと思ったら又もやドタバタがあって、いつのまにか、彼の手には 鳥籠が。その中にはなんと皇帝ペンギンの雛が入っていた。 いったいどないせえと言うんや? 故郷に帰してくれって言うんやろなあ? 故郷って? 結局はコドク(孤独)と名付けた雛ペンギンを連れて南極点を目指すことに。 餌はどうすんねん? どやって飼うねん? どやって運ぶねん? ドタバタ続きの毎日、三千綱ワールド全開だ。 とても楽しい。面白い。 そしてちょっとビターで、 ちょっと悲しい。

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最近読んだ本、「百年の散歩」、「蘇我氏と飛鳥」、「コスパ飯」

多和田葉子、「百年の散歩」 この本を読みながら吉田健一、「東京の昔」、永井龍男「東京の横丁」、 陳丹燕「上海メモラビア」等々を思い出した。街を題材にした本は枚挙のいとまが ないほどある、知ってる街でも知らない街でも興味ある街ほど面白く、楽しい。 知ってる街ならあああそこかと思うし、知らない街なら行ってみたいと思う。 カント通り カール・マルクス通り マルティン・ルター通り レネー・シンテニス通り ローザ・ルクセンブルグ通り プーシキン並木通り リヒャルト・ワーグナー通り コルヴィッツ通り トゥホルスキー通り マヤコフスキーリング ベルリンは行ったことがないし、それほど行きたいって思ってないけど、なんの変哲もない ような街角でふとしたモノを見つけた、見たことから連想が始まる、あるいはふと何かを 考えていたその想念がモノを見つけさせる、そしてそこからあるいは時間を超えて、 あるいは空間を飛んで立ち上がるものがある、そんな世界が描かれている。 硬質な淡々とした文章の中から時々、はっとするような鋭い言葉が飛び出してきて、なぜか 心を鷲掴みにされたりする。 どうして街をこんな風に表現できるんやろと思ったりする。 石畳の道、木造りの家、ガラス窓、街灯、並木、古い椅子、物語はどこにでもある。 言葉遊びのような、想念あそびのような、そして、こんなとこにやっぱり行ってみたいなあって思った。 ベルリンって通りの名前の付け方もええですなあ。

遠山美都男、「蘇我氏と飛鳥」 昔から蘇我氏は悪者って決まってた。特に歴史を勉強したりしいへんかったらそのまま 刷り込まれたまま大人になってしまう。他にもいろんな刷り込みがあって、誰が 意図してそうなったかしらんけど、いつの間にか事実と違った歴史が確定していった というのが本当やったら恐ろしい。後の世で研究が進んでだんだん事実がわかってきて 修正されていくのはええことやなあって思う。 ほんなら今は大丈夫なんやろか、マスコミの報道ですら恣意的に捻じ曲げられてる とこがあるんちゃうやろかと疑うとこれからの歴史も心配になる。 それはさておき、悪者蘇我氏の存在が随分見直されたり、その頃の歴史の考え方が どんどん変わってきてるというのをいろんな本で読むことが多い。 気を衒ったようなんもないではないけどなるほどそうやなって膝を打つような ことも多くある。 稲目・馬子・蝦夷・入鹿ら蘇我氏四代と天皇との関係、飛鳥という土地との関係、 朝鮮半島や中国との関係、物知らずのわしにとってはなるほどと大いに感じる ところがあった。ついでに聖徳太子がほんまにおったんかとか、乙巳の変のその後は どうなったんかとか切り込んでくれるともっと面白かったのにと思う。

成毛眞、「コスパ飯」 「究極の卵かけご飯のために購入する2000円の醤油は高いか?」、 「最高の投資効率を保証する、知的美食のすすめ」 なんて本の帯に書いてあったら、ついそそられて読んでしまう。しかし、残念ながら わしのようなB級、路地裏食堂好き、ディープな店好きとはちょっと志向が違うようで、 あんまり、そやねん、とか、それ食いたいとか、ええなあとか思うことが少なかった。 えらい人にはえらい人なりの世界があるようだ。

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ありがとうございました。

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最近読んだ本、「貧困の発明」、「漱石とホームズのロンドン」

タンクレード・ヴォワチュリエ、「貧困の発明 経済学者の哀れな生活」 この本、メチャメチャ面白い。トマ・ピケティが絶賛なんて書いてあったんで ちょっと学問的なとこもある異色の小説家なって思ってたらそんなことはない。 ただただ面白い。 ジェイソンは海洋生物学者だ。ある朝、事務所に出社すると巨大な垂れ幕が。 何じゃこれは、わしの一物の写真ではないか。これには間抜けで深いわけがある。 即座に会社をやめた彼は、離婚係争の中、家を手放し、ケープコッドにある 友人の別荘に転がり込む。さて彼のハチャメチャな暮らしはどうなっていく? いや、主人公は彼ではない。 ロドニーという経済学者がいる。韓国人の国連事務総長ドン・リーの特別顧問として 貧困撲滅プロジェクトに取り組んでいる。ということは、彼はどんどん貧困を見つけ出す、 あるいは生み出して、このプロジェクトに資金を集め、投入しつづけなければならないのだ。 決して撲滅して終わってしまってはならない。そのためにはありとあらゆる知恵を絞り、 手段を講じなければならない。このプロジェクトはなくなってはならないのだ。 そのためにロドニーは世界中を走り回る。 ある時、ベトナムのハノイにいた。裏町の街角で妖しい喫茶店に入った。そこに 美し娘がいた。ヴィッキーだ。この娘を文明国に連れて来て磨いて嫁にしよう。 なんという結婚式。前代未聞ではないか。そして、パーティは新居で。それは ジェイソンがいた別荘。人と話がどんどん入り乱れて来る。 ベトナム人の神父、タンはヴィッキーを救えるのか? ロドニーの弟はどうなる。 恋する男ジェイソンの活躍はまだか? ガソリンスタンドの主人、スティーブの役割は? とても面白い。 この中に実際に思い当たる人が一杯いてるんやろねえ。

多胡吉郎、「漱石とホームズのロンドン:文豪と名探偵 百年の物語」 百年以上前に漱石はロンドンに居た。その頃シャーロック・ホームズもロンドンに居た。 そんなわけはないけど、それが書かれた時代、同じ舞台が登場するのだ。 その頃のロンドンの地図はこんな具合だったらしい。

テームズ川の北側に有名な場所が集中している。川の南はできたばかりの新興住宅地 だった。やはり住むなら川の北側、東京の山手、関西の芦屋、西宮ちゅう感じかも 知れん。興味深い施設もいっぱいあるし、親しい人も沢山住んでいる。しかし、 限られた留学費用から下宿代を捻出するのは大変だ。折角いい大家を見つけても 南側に移動してしまったんではついて行かざるを得ない。シャーロック・ホームズの もテームズの北に住んでいる。そして事件の主な舞台も北側だ。ただし、事件の 内容や登場人物によってはあえて南側に出没する場合もある。ホームズの事件の 動きと漱石の手紙や手記からくるロンドンの様子が交錯してその当時のロンドンの 街のありようが生き生きと立ち上がってきてとても面白い。

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ありがとうございました。

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