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最近読んだ本、「誰も知らない熊野の遺産」、「アノニム」

栂嶺レイ、「誰も知らない熊野の遺産」 こないだ熊野古道の小辺路を歩いた。緑が蒸れ出すような深い森の中を登ったり 降ったり するような旅だった。昔から紀州の山の中は好きやけどやっぱりええなあって 思った。 百夜月 熊野の山の奥、川向こうに小さなお寺があった。そこで修行する若くて美しい尼僧に 会いたいと若者が月の光をたよりに舟で渡ろうとするが99晩ことごとく失敗する。 そしてとうとう百晩目、今日こそは、でもダメよと母に諭される。 尼僧は月の光に守られているのだ。 そんな民話の場所がある。とてもええではないか。しかし、今は簡単には渡れない。 その尼僧とは、高貴な血筋の方なのか、民話の謎をさぐる? 九重 和歌山県には不思議なことに厳島神社がいくつもある。 なぜなのか? そして森の中に広大な棚田の跡が。雲海の中に見え隠れするそうだ。 どうしてこんな暮らしがなくなってしまったのか? 幻の玉置街道 熊野古道で有名な玉置神社の表参道はもうなくなってしまったのか? 昔の賑わいはなぜなくなったのか? 単なる熊野古道歩きの情報発信というだけではなくて、そこにまつわるいろんな 暮らしやそれにまつわる民話や伝説、その意味を探って山の奥深くまで訪れ、 印象的な写真をたくさんとっている、そういう本だ。 竹筒 花井 三十三間堂 前鬼 徐福 那智の火祭り 太地のクジラ ・・・・ これを読んでると熊野の山で行きたいところがいっぱい出来た。 今では、紀州熊野の山も乾いてしまった。ポタポタ木からおちる山蛭もいてへんし、 山姥や精霊も見当たらへん。それでも山道のここかしこには心が引き締まるような 気持ちがするような場所がたくさんある。 そういうところへ一杯いってみたい。 体力をつけて頑張らねば。

原田マハ、「アノニム」 面白いミステリーだ。この人の作品は絵画あるいはその作者が主題になってるんで 内容にかかわらずつい読んでしまう。時には感動するし、時には心惹かれるし、 ときにはチャラさに驚いたりする。 これはどうなんやろ? 時は香港の学生たちによる民主化運動の最高潮。 そんな時に香港で壮大なオークションが開催されることになった。 目玉はアクションペインティングの世界を切り開いたジャクソン・ポロックの 幻の作品、「ナンバーゼロ」らしい。 オークションを主催するのはサザビーズ、そこの花形オークショニア パトリック・ダンドランが采配する一大イベントなのだ。 そして、今まで狙った獲物は合法、非合法にかかわらずどんな手段を使ってでも 手に入れて来たという悪魔のような黒幕がいる。 さて、その黒幕ははたして、「ナンバーゼロ」を手にいれることができるのか? 謎の集団アノニムとは何ものなのか? 人たらしの名人? […]

最近読んだ本、「サラバ 上、下」、「母の記憶に」

西加奈子、「サラバ 上、下」 これは異色というか、変わったというか、馴染みにくいというかなんとかく微妙な 感じを抱きつつ読んでいた。真面目なようでチャラいようでやっぱりチャラいんと ちゃうやろか? 舞台はいきなりイランから始まる。永遠の都テヘランだ。イスラム紛争で激動の街でもある。 父の転勤でこの街で暮らすことになった圷(あくつ)歩の少年時代。親友もできた。 楽しいことはいつまでもつづくかと思われた頃、突然の別れ、今度は日本に戻る。 美しくて優しい母はなぜ父と仲が悪くなったのか? 父は一体何をしたのか? 母はどうなってしまったのか? とてもエキセントリックな姉、貴子はなぜ、 サトラコヲモンサマ を讃える道に 進むのか? サトラコヲモンサマ を生み出したおばちゃんに誰もが心を救われたはずなのになぜ? エジプトへ、又、テヘランへ、姉は巻貝になってしまうのか? 母はなぜ勝手に幸せになりたいのか? 父はなぜ、そこまでストイックなのか? 壮大なようで波乱万丈なようで、都合よすぎるようで、面白いけど、馴染めない。 ジャスミン革命の時代、アラブの激動の時代だ。それなりにワクワクするけど、 せっかくわしが見たこともないアラブの世界に連れて行ってくれるんやったら、 その地の人と暮らしがもっともっと立ち上がるような気分の中にわしを誘って行って 欲しいなと思った。 とても面白いんやけど何か不満。

ケン・リュウ、「母の記憶に」 普段あんまりSFは読まへんのやけど、前にこの人の「紙の動物園」を読んで、 とても良かったんで、この人の本を読むのを楽しみにしていた。 この人の本には、いつもわしの知ってる或いは知らない漢詩や説話、名文が でてきて、なみなみならぬ完成と素養を思わせられてしまう。 今回もとても素晴らしい短編集だ。 烏蘇里羆 満州の極寒の荒れ地に幻の烏蘇里羆(ウスリーひぐま)を捉えにきた帝国陸軍の ロボット軍団。なぜかこの人の小説のなかではいつも日本帝国は滅びてなくて 健在だ。そして今や戦士も馬も戦闘ロボットだ。蒸気機関とメカを巧みに操って自由自在、 無敵の戦士だ。魔性の烏蘇里羆を待ち受ける。 しかし、魔性の熊の方が何枚も上だ。荒唐無稽のSF話のようでいて、自然の神秘や 恐ろしさに対する畏敬や心の葛藤、苦しみ、様々な人間的なものが心を打つ。 草を結びて環を銜えん 昔、中国、大明国末期の頃、北方の異民族、後に清という国をつくる民に、侵略されて 南の大都会揚州で起死回生の大戦闘があった時に負けた明側の兵士だけでなく 民もふくめて大虐殺されたことがあった。その時に我が身を捨てて、少しでも 愛するものや民衆を救えるチャンスを作ろうと身を捨てて秘策を施す賢い遊女、 侍女の雀が伝えるものは? 母の記憶に いつも母に会うのはわずかな時間だけだ。それは何故? 限られた命のなかで娘を見守ることができる唯一の方法とは? 時間と空間の流れのなかで命の儚さと生きることの悲しさが胸を打つ。 存在 いつかはこんな時代が来るんやろか? 遠隔介護って? […]

最近読んだ本、「幕末単身赴任 、下級武士の食日記」、「長春五馬路」、「大陸の細道」

青木直也、「幕末単身赴任 、下級武士の食日記」 昔、「花の下影」という本を読んでいたく感動したことがある。幕末の頃、 作者不詳ではあるが、美味しいもんを食わせる店の様子を描いた画帳で、 とても素晴らしい内容だ。今はデジタルカメラがあるし、スマホがあるから簡単 やけど、食い物屋や食い物を臨場感を持って絵に描くのはとても難しい。勿論 カメラに写すのもそれなりにテクニックは必要で上手に写した写真は魅力的なんやけど、 筆と墨の時代にこういう作品ができてるのは素晴らしい感性やと思った。 真似をしょうとおもうけどなかなかできへん。 この本は、画帳ではなくて日記だ。絵はないけど暮らしが浮かんでくるし、 料理の味が浮かんでくる。 酒井伴四郎は紀州藩の藩士、今で言えば中間管理職のちょい下くらいのポジションでは なかろうか。参勤交代のお供をして紀州から江戸まで単身赴任の旅だ。 わしも和歌山生まれやからこの時点で親近感バリバリになる。 江戸に着くまでの旅の話も面白い。台風、洪水散々な目に遭いながらも食うものは 食っている。そして江戸暮らし、下っ端役人は節約が必要だ。おいしいもんを 食うためには知恵を絞らんとあかん。上手に料理して、上手に食べる。 ところが、上司でもあり、何もせえへん叔父さんにいつも奪われてしまう理不尽にも くじけずにあかるく生きている。 実に面白い。こういう本はもっと発掘してほしいものだ。

木山捷平 、「長春五馬路 」 図書館の本棚に並んでいるのを、「長春」という言葉に惹かれて借りることにした。 長春は瀋陽よりさらに北にある。結構大きな都市だ。元の満州国の首都の時は新京って 呼ばれてた。行った時は、偽満州国って看板がデカデカとあって、9.18を忘れるなと 言うような看板もあったような気がする、とにかく日本に対する圧力が強そうな ところだった。終戦直後はもっと大変なとこやったと思う。戦争が終わるまえからも そのあとからも満州やら中国、朝鮮から日本に命からがら逃げ出す、その時の大変だった 話を、いろんな本で読んできたけど、ここではそんなんがまるで嘘のように、 戦に負けた後の満州の元首都だった街の街角の風景が淡々と描かれている。どうして こんなに飄々となれるのか、一旦地獄を見てしまったからなのか? 逃げ遅れた人たち、元々の満州の人たち、中国人、ソ連軍が攻めてくるのを怯える人たち、 共産軍と戦う国民党軍の人たち、様々な人たちと関わり合いながらギリギリの暮らしを 楽しんでるかのような爽やかささえ感じられるのがとても新鮮だった。 ある中国人の夫人の家に招かれる。成り行きでベッドに? しかし、酔い潰れて役にたたん。枕元に李白の詩、 日々酔いて泥の如し 李白の婦に為ると雖も 何ぞ太常の妻に異ならん 「又、あとで・・」って粋な手紙が添えられて・・ これはチャンスか? ハニートラップか? うらぶれた街角と人と人の描きかたがとてもよかった。

木山捷平 、「大陸の細道 」 「長春五馬路 」がすごい良かったんでこの本も読んで見たいと思った。 これも同じ気分が流れている。 敗戦直前の満州、長春の風景だ。 主だった人たちはもうすっかり引き上げてしまったかもしれない、逃げ遅れたかも […]

最近読んだ本、「音楽と沈黙Ⅰ、Ⅱ」、「ビニール傘」

ローズ・トレメイン、「音楽と沈黙Ⅰ、Ⅱ」 ある日、ピーター・クレアという美貌のリュート奏者がコペンハーゲンにある ローセンボー城にやってきた。デンマーク王クレスチャンに雇われて、彼の楽団に 参加して演奏するためだ。王の居室には奇妙な仕掛けがある。その地下で楽団が 演奏すると複雑な伝声管を伝ってその部屋で音楽が聞こえるという仕組みなのだ。 王はその仕組みがいたくお気に入りで、そのため楽団員は暖房の無い地下で震え ながら演奏をしなくてはならない。 一方王の妻、正式な妃ではない、キアステンは恋多き女性だ。淫乱と言っても良い ほどだ。王の隙をみて愛人、オットー伯爵とやりまくっている。 しかし、キアステンにぞっこんの王はまだ気がつかない。彼女の気を惹くのに 必死だ。 そして、ピーター・クレアには昔の想い人がいる。オフィンガル伯爵夫人だ。 しかし、何時の頃からか、キアステンの侍女エミリアに想いを寄せるようになった。 さて、舞台は出揃いつつある。 事態は段々とややこしくなっていく。 キアステンの浮気三昧が明るみになっていくのか? 彼女はデンマークに居られるのか? 王はどうするのか? 王にも悩みがある。デンマークの経済が怪しくなっている。起死回生の手立ては あるのか? ピーター・クレアのリュートの響きは国費改善のための売り物になるのか? ピーター・クレアとエミリアの運命はどうなるのか? 舞台はデンマークの田舎町のお城に? あるいはイギリスに? オフィンガル伯爵はピーター・クレアとよりを戻せるのか? 中世のドタバタ恋物語のようでいてそんなことはない。 長編ではあるけど一生懸命読んでしまう。 現代にある人間模様そのものが立ち上がってとても面白い。

岸政彦、「ビニール傘」 続き物のような、あるいは呼応するもののような、あるいは似て非なるものの ような、2つの短編に流れる孤独と切なさに胸が痛む。

ビニール傘 ガールズバーに勤めて、あるいは勤めるしか無くて生きてる女の子。 解体屋でアルバイトしながら暮らす若い男。 タクシー運転手との何と言うことのないすれ違い。 美容院勤めの暮らしの中。 全く普通の何と行くことのない暮らしが淡々と綴られる。 どこにでもありそうな大阪の下町の風景。 さしたるドラマチックも起承転結もなさそうな、日々の暮らしが流れて行く。 救いのないような閉塞感が漂う。いつも実を結ばない異性のとの交わり、 孤独だけが心に残る。

背中の月 システム開発の会社に勤める営業マン。仕事からも仲間からも心が繋がらない。 やりきれない孤独と闇を抱えているかのような暮らしをしているのではないか? 彼の心に繋がっているのは妻だけなのか? 妻は生きているのか? 二人の暮らしって? 静で淡々として何の物語りもないようで、じわっと切なく胸を打つ作品だと思う。 普通を普通に描ききる筆の力ってすごいんかもしれん。

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最近読んだ本、「罪の声」、「キトラボックス」

塩田武士、「罪の声」 これはすごい。一気に読んでしまった。あの「グリコ森永事件」をベースにした 推理小説だ。わし自身、実際の事件を振り返っみたら何もわかってないし、何もかも うろおぼえ、世の中の大事な事を直視しないで過ごしてきた数々のことがらの ひとつやなあって改めて反省した。 もしかしたら、本当にこうだったかもしれん。いかにもな話を空想してみると 言うよりは、綿密に記録を調べて調査と推理を組み立てているような構成だ。 まるでドキュメンタリー映画をみているよう、ぐんぐん惹き込まれていく。 グリコ森永事件はこの本ではギン萬事件だ。 今時珍しいテーラーの仕事を父のあとを継いで続けている曽根俊也という男がいる。 ある日、父の遺品の中から古いカセットテープを見つけた。その中には驚くべき 内容が録音されていた。「ギン萬事件 」の犯人からの脅迫電話の音声ではないか。 しかもその声はまさか、自分自身? 一体何故? どういう経緯で? 何故父の 遺品に? 調べずにはいられない。昔からの客であり、頼りになる知人、堀田の 助けを借りよう。二人が見つけていくものは? 阿久津と言う記者がいる。何か特別なスクープネタを拾えと命じられる。 「ギン萬事件 」をヨーロッパの誘拐事件と絡めて調べることから始まった。 阿久津が掘り出していくものは? 埋もれてしまっていた関係者を丁寧に探り、すこしずつ当時の事情に近づいていく。 曽根俊也は父の周辺から、当時の関係者を・・ 阿久津はイギリス、ハイネケン社長誘拐に興味を持った東洋人を・・ 少しずつ、埋もれていた記憶が明らかになっていく。 果たして誰と誰がどう関わっていたのか? 犯人は? あるいは犯人グループは? 何故? とてもおもしろい。 ほんまにこうやったんちゃうやろかという説得力まで感じてしまう。 さて、真犯人は誰なのか? 驚愕の事実が次々に明らかになる。

池澤夏樹、「キトラボックス」 ある日、国立民族学博物館、研究員の可敦は考古学者、藤浪から禽獣葡萄鏡を 見に行くよう依頼される。ウィグル出身の彼女にはもしかしたらこの鏡の出所に 心当たりがあるのではないかということだ。 そして、日本、中国、ウィグルをかけた鏡の謎が浮かんできた。彼らはこれを 解き明かせるのか? そして大嶺の山中から発見された剣とは? 剣に彫られた7つ星は? キトラ古墳と繋がりは? はるか昔、遣唐使に付いて唐の都に使いした貴人とは? そして、連れ帰った 胡人とは? 果たしてキトラ古墳に眠るのはだれなのか? 時空を超えて、空想と謎解きと冒険が始まる。 その頃、突然、可敦に危険が迫る。可敦とはいったい何者なのか? 文学的にどうのこうの言うより、話題がとても面白い。古墳の埋葬者は誰か? 副葬品は何故そこにあるのか? […]

最近読んだ本、「漂流」、「さすらいの皇帝ペンギン」

角幡唯介、「漂流」 この人の、「空白の五マイル」という本を読んだことがある。チベットの山奥深くにツァンポー峡谷 というところがあって各国の探検隊が挑むが後五マイルを残して踏破できていなかった。 そこには幻の瀧があるという。そこに挑む作者自身の冒険談だった。ただの自慢話的な 内容ではなくて、真摯で内省的なところもあるし困難に挑む姿勢も共感できて楽しく 読むことができたんで、早速手にとってみた次第だった。 これはある漁船がグアム島付近で操業中に遭難し、救命筏で乗組員と共に37日間 漂流した後に奇跡的に救助されたという物語から始まる。本村実船長と8人の フィリピン人船員全員が助かったのはなぜなのか? これは漂流そのものを追う物語ではなかった。 作者が取材のため本村船長の足跡を追ううちに次々と意外な事実にぶつかった。 足も伸ばせない狭い筏の中で9人もの男が食い物もなく水もなく苦しんでいる、 船長を殺して食おうと言う話まで出たそうな、そんな強烈な体験をして、もうこりごりの はずなのに本村船長は8年後に又船の乗ったのだそうだ。そして、そのまま忽然と 姿を消してしまったのだそうだ。 一体何が起こったのか?

そこまで彼を駆り立てたのは何なのか? 彼の出身地、宮古島、池間島に飛ぶ。 沖縄の漁師とは、宮古の漁師とは、池間の漁師とは? 南洋漁業の原点に迫る。 ミクロネシアの島々で大散財をしたおした彼らの隆盛はどこに行ったのか? 本土や、東南アジアの漁師たちが押し寄せる海域で彼らがそれなりのポジションを 確保できたのはなぜなのか? そして漁に出るしか生きられない彼らの性とは何なのか? 丁寧に徹底的に取材を続ける。克明に綴られたルポジュタージュは小説を読むような 牽引力がある。遭難船をただ追いかけるよりははるかに面白い。 フィリピン、台湾、中国、インドネシア、日本等々、南方海上の漁業の厳しさが 過去から現代にかけて立ち上がってくる。 とても面白い。

高橋三千綱、「さすらいの皇帝ペンギン」 こちらの冒険はメチャ、チャラい。面白くてアホくさい。けどまあ、たまには ゲラゲラ笑いながら本を読むのもええかもしれん。 あるいはこれを軽妙洒脱で感動的と言うのか。 小説家、楠三十朗は突然、南極に行くことになった。テレビ会社の開局記念番組 のドキュメンタリーで高名な作家がレポーターとしていくことになっていたのが ドタキャンされたので身代わりにオファーされたのだ。そこから、三十郎先生の ドタバタ旅が始まる。 まず着いたのが南極への基地となるチリのプンタアなレス、実はそこは彼の訳あり の地でもあった。前にこの地である女性と色恋のドタバタがあったというか、命を 助けられたというか、ややこしい思い出があるのだ。奇しくも彼女の知り合いに 巡り合うことができたと思ったら又もやドタバタがあって、いつのまにか、彼の手には 鳥籠が。その中にはなんと皇帝ペンギンの雛が入っていた。 いったいどないせえと言うんや? 故郷に帰してくれって言うんやろなあ? 故郷って? 結局はコドク(孤独)と名付けた雛ペンギンを連れて南極点を目指すことに。 餌はどうすんねん? どやって飼うねん? どやって運ぶねん? ドタバタ続きの毎日、三千綱ワールド全開だ。 とても楽しい。面白い。 そしてちょっとビターで、 ちょっと悲しい。

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最近読んだ本、「百年の散歩」、「蘇我氏と飛鳥」、「コスパ飯」

多和田葉子、「百年の散歩」 この本を読みながら吉田健一、「東京の昔」、永井龍男「東京の横丁」、 陳丹燕「上海メモラビア」等々を思い出した。街を題材にした本は枚挙のいとまが ないほどある、知ってる街でも知らない街でも興味ある街ほど面白く、楽しい。 知ってる街ならあああそこかと思うし、知らない街なら行ってみたいと思う。 カント通り カール・マルクス通り マルティン・ルター通り レネー・シンテニス通り ローザ・ルクセンブルグ通り プーシキン並木通り リヒャルト・ワーグナー通り コルヴィッツ通り トゥホルスキー通り マヤコフスキーリング ベルリンは行ったことがないし、それほど行きたいって思ってないけど、なんの変哲もない ような街角でふとしたモノを見つけた、見たことから連想が始まる、あるいはふと何かを 考えていたその想念がモノを見つけさせる、そしてそこからあるいは時間を超えて、 あるいは空間を飛んで立ち上がるものがある、そんな世界が描かれている。 硬質な淡々とした文章の中から時々、はっとするような鋭い言葉が飛び出してきて、なぜか 心を鷲掴みにされたりする。 どうして街をこんな風に表現できるんやろと思ったりする。 石畳の道、木造りの家、ガラス窓、街灯、並木、古い椅子、物語はどこにでもある。 言葉遊びのような、想念あそびのような、そして、こんなとこにやっぱり行ってみたいなあって思った。 ベルリンって通りの名前の付け方もええですなあ。

遠山美都男、「蘇我氏と飛鳥」 昔から蘇我氏は悪者って決まってた。特に歴史を勉強したりしいへんかったらそのまま 刷り込まれたまま大人になってしまう。他にもいろんな刷り込みがあって、誰が 意図してそうなったかしらんけど、いつの間にか事実と違った歴史が確定していった というのが本当やったら恐ろしい。後の世で研究が進んでだんだん事実がわかってきて 修正されていくのはええことやなあって思う。 ほんなら今は大丈夫なんやろか、マスコミの報道ですら恣意的に捻じ曲げられてる とこがあるんちゃうやろかと疑うとこれからの歴史も心配になる。 それはさておき、悪者蘇我氏の存在が随分見直されたり、その頃の歴史の考え方が どんどん変わってきてるというのをいろんな本で読むことが多い。 気を衒ったようなんもないではないけどなるほどそうやなって膝を打つような ことも多くある。 稲目・馬子・蝦夷・入鹿ら蘇我氏四代と天皇との関係、飛鳥という土地との関係、 朝鮮半島や中国との関係、物知らずのわしにとってはなるほどと大いに感じる ところがあった。ついでに聖徳太子がほんまにおったんかとか、乙巳の変のその後は どうなったんかとか切り込んでくれるともっと面白かったのにと思う。

成毛眞、「コスパ飯」 「究極の卵かけご飯のために購入する2000円の醤油は高いか?」、 「最高の投資効率を保証する、知的美食のすすめ」 なんて本の帯に書いてあったら、ついそそられて読んでしまう。しかし、残念ながら わしのようなB級、路地裏食堂好き、ディープな店好きとはちょっと志向が違うようで、 あんまり、そやねん、とか、それ食いたいとか、ええなあとか思うことが少なかった。 えらい人にはえらい人なりの世界があるようだ。

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最近読んだ本、「貧困の発明」、「漱石とホームズのロンドン」

タンクレード・ヴォワチュリエ、「貧困の発明 経済学者の哀れな生活」 この本、メチャメチャ面白い。トマ・ピケティが絶賛なんて書いてあったんで ちょっと学問的なとこもある異色の小説家なって思ってたらそんなことはない。 ただただ面白い。 ジェイソンは海洋生物学者だ。ある朝、事務所に出社すると巨大な垂れ幕が。 何じゃこれは、わしの一物の写真ではないか。これには間抜けで深いわけがある。 即座に会社をやめた彼は、離婚係争の中、家を手放し、ケープコッドにある 友人の別荘に転がり込む。さて彼のハチャメチャな暮らしはどうなっていく? いや、主人公は彼ではない。 ロドニーという経済学者がいる。韓国人の国連事務総長ドン・リーの特別顧問として 貧困撲滅プロジェクトに取り組んでいる。ということは、彼はどんどん貧困を見つけ出す、 あるいは生み出して、このプロジェクトに資金を集め、投入しつづけなければならないのだ。 決して撲滅して終わってしまってはならない。そのためにはありとあらゆる知恵を絞り、 手段を講じなければならない。このプロジェクトはなくなってはならないのだ。 そのためにロドニーは世界中を走り回る。 ある時、ベトナムのハノイにいた。裏町の街角で妖しい喫茶店に入った。そこに 美し娘がいた。ヴィッキーだ。この娘を文明国に連れて来て磨いて嫁にしよう。 なんという結婚式。前代未聞ではないか。そして、パーティは新居で。それは ジェイソンがいた別荘。人と話がどんどん入り乱れて来る。 ベトナム人の神父、タンはヴィッキーを救えるのか? ロドニーの弟はどうなる。 恋する男ジェイソンの活躍はまだか? ガソリンスタンドの主人、スティーブの役割は? とても面白い。 この中に実際に思い当たる人が一杯いてるんやろねえ。

多胡吉郎、「漱石とホームズのロンドン:文豪と名探偵 百年の物語」 百年以上前に漱石はロンドンに居た。その頃シャーロック・ホームズもロンドンに居た。 そんなわけはないけど、それが書かれた時代、同じ舞台が登場するのだ。 その頃のロンドンの地図はこんな具合だったらしい。

テームズ川の北側に有名な場所が集中している。川の南はできたばかりの新興住宅地 だった。やはり住むなら川の北側、東京の山手、関西の芦屋、西宮ちゅう感じかも 知れん。興味深い施設もいっぱいあるし、親しい人も沢山住んでいる。しかし、 限られた留学費用から下宿代を捻出するのは大変だ。折角いい大家を見つけても 南側に移動してしまったんではついて行かざるを得ない。シャーロック・ホームズの もテームズの北に住んでいる。そして事件の主な舞台も北側だ。ただし、事件の 内容や登場人物によってはあえて南側に出没する場合もある。ホームズの事件の 動きと漱石の手紙や手記からくるロンドンの様子が交錯してその当時のロンドンの 街のありようが生き生きと立ち上がってきてとても面白い。

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最近読んだ本、「壁の男」、「応仁の乱」

貫井徳郎、「壁の男」 どこか関東の方の地方都市に珍しいスポットがあるという。ノンフィクションライターが 旅に出た。なるほど変わってるという噂の家があった。どう変わってるんや? 家の外壁全部に絵が描かれてる。とんでもない絵に見える。プロの絵というよりは 子供が描いた絵のようだ。色も派手で力強く、どこか味わい深いところがないでは ないけど美味いとは言えないような気がする。それでもどこか惹かれる。それに この絵はこの1軒だけではないようなのだ。よく見たらあっちにもこっちにも、 殆どこの集落全部なのではなかろうか? 描いたのは誰だろう? どんな人が? どんな理由で? えっ、どんな絵やろ? どんな絵を想定してこの物語が書かれてるんやろ? わしかて見てみたい。で、いきなり本の世界に引っ張られる。 尋ね回るうちにある人物が浮かび上がって来た。 一人暮らしの伊苅という男らしい。 寡黙な男だ。尋ねて行っても頑なに心を開かない。 何度も尋ねるうちに少しずつ話始めた。でも、詳しくは話さない。何か理由が ありそうだ。何か暗い闇を背負ってるんとちゃうやろか? 本人だけでは埒が明かないんで関係ありそうなあらゆるところを取材に回る。 少しずつ。見えてきた。 妻梨絵子はどうした。子供がいたらしい。その子、笑里はどうなった。 少しずつ謎がほどけて見えてくる。 なぜ伊苅は住民から疎外されていたのか。そして住民はなぜ彼に心を開いて絵を 頼むようになったのか? 絵の果たす役割とは何なのか? それはわしも知りたい。 そしてつぎつぎと驚きの事実が明らかになっていく。 いやこれ以上の驚愕があるのだろうか? とても面白い。

呉座勇一、「応仁の乱- 戦国時代を生んだ大乱 」 この本、とても面白い。割と硬い目の歴史学者的な、研究レポート的な内容かと 思って読み始めた。事実そうなんやけど、内容がとても面白くてついつい読んで しまう。人名が一杯でてきて、それぞれが難しい読み仮名ですぐさま読み方を 忘れてまた戻りつ行きつ、あれがああなったんかこれがこうなったんか誰が敵か 味方か糾える縄の如しでわけわからんけどそれが結構面白いし、実はそれが現実 だったのらしい。 応仁の乱のあたりの歴史なんてさくっと通り過ぎててあんまり覚えてへんかった。 京都の老舗を云々するときによくつかわれる、「戦の後以来の・・・」でいう 戦って第二次大戦ではなくて応仁の乱のことやで、それほど古いんやでという言葉 で最後に京都が大きく焼かれた頃なんやと漠然と知ってるていど。 細川勝元と山名宗全の勢力争いが東西に分かれた前面戦争に。 足利義政の後継者争いに、日野富子がからんだ女が政治によこしまにに絡んだ。 なんてことをステレオタイプに記憶してただけだ。 しかし、この本を読んでみると近畿一円のいろんな豪族や部族の領土争い、縄張り 争い、跡目争い、様々な利権と怨念がぐるぐる回って、今日はあいつと手を組んで あしたはこっちについてなんて節操があったりなかったり、戦争になったらならん かったりそんな争いを延々とやってた時代にことを応仁の乱って言うらしい。 よんでると成る程そうかと頭の中が整理できたきたり、その後の戦国時代の本格的 な争いの元はこんなとこにあったんかと目を洗われるようなこともある。 難しくて面倒くさいけど、とても面白い本だ。 […]

最近読んだ本、「サロメ」、「いまさら翼と言われても」

原田マハ、「サロメ」 この作家の本は出たらつい読んでしまう。やっぱり画家の作品と暮らしがテーマに なってることが多いんで興味深い。今回は、「サロメ」、作家と画家が登場する。 ユダヤの王エロドは兄を殺して王位に就き、その妃を自分の妻とした。そして、 あろうことかその娘、サロメにまで触手を伸ばそうとしている。サロメは、 獄に繋がれた預言者ヨカナーンに心惹かれるが激しく拒絶される。ある日、サロメは 王に舞を所望され、何でも好きなものを褒美にもらうやくそくで引き受ける。 そして、要求されたものはヨカナーンの首だった。 運ばれた首にサロメは口づけし、愛を語る。 エロドはサロメを殺させる。 こんな、妖しいエロスと耽美と退廃に満ちた戯曲を書いたのがオスカーワイルドだ。 そして、その挿絵を描いたのがオーブリー・ビアズリー。 二人と、オーブリーの姉、彼らにまつわる男たち、女たち、欲望と愛憎、倒錯の 渦巻くデカダンスの世界。 そして、オーブリー・ビアズリーの強烈な絵が登場する。 白と黒だけの世界。今まで見たこともない世界。憎しみと諧謔とエロスと退廃に 溢れた世界。常人のモラルと感性の限界を嘲るかのようだ。 この本に刺激されてオーブリー・ビアズリーの絵をじっくりみてあらためてその 鋭さに驚いた。この絵からあんな物語を紡ぎ出せるというのもすごいもんだ。 異論はないではないけど。

米澤穂信、「いまさら翼と言われても」 この作者の本を読み始めたら、いつも、こんなん推理小説になるんかいな、殺人も ないし、強盗もないし、命を狙う悪漢とのアクションもない。日常生活が淡々とある。 しかし、日常生活でも謎があるし、謎解きもある。 それが結構楽しくてスリリングで気が付いたらいつのまにかその世界に引き寄せられてる。 そして、またかなと思いつつ読んでしまう。 ある日、高校の生徒会長選挙があった。どうも水増し開票があったみたいだ。 しかし、どう考えても選挙管理員がそんなことをするはずがないし、そんなチャンス もなかったはずだ。一連の作業は厳粛に管理されて居た。 一体誰がどうやって? 中学校の時の卒業制作のことを思い出した友人がいた。誰かの手抜きで作品が 台無しになったという思い出。しかし、果たしてその人が本当に悪かったのか? その裏に何が隠されて居たのか? 先生が好きだというヘリの話に隠されたなぞ、漫画研究会の主導権争い。 果たしていろんな謎は解けるのか? ちぃちゃんはどこに隠れてしまったのか? 何故か面白い。

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最近読んだ本、「王様のためのホログラム」、「旅をすること」

デイヴ・エガーズ、「王様のためのホログラム」 サウジの空港にアメリカ人が降り立った。ビジネスコンサルタントらしい。カッコイイ。 かな? なんとなくカッコよくなさげだ。 これから、砂漠の真ん中にあるビジネスパークのようなテント村に行ってプレゼンを やるらしい。ホログラムとITを駆使して砂漠の中に仮想現実を浮かび上がらせる仕掛けだ。 うまくいったら王様が買い上げてくれる。がっぽり儲かる。 かもしれん。 しかし、アランはどじばっかり、車を手配してもいつ来るかわからん、どこへ行くかわからん。 プレゼンしょうと思っても、WiFiはないし、エアコンも効いてない。それはどれも アランのせいではない。何をやってもうまくいかんのは運が悪いからなのか、何か 不条理な力に操られているのか。よう考えたら、世の中って不条理に満ちていると ちゃうんやろか。今までいろいろ事業をやってきたけどアイデアはよかったはずやのに 資金も集まりかけてたのに、最後の瞬間に中国企業に持っていかれた。 そんな目にあってもアランはようやってる。元々、能天気なんか、めげない性格 なんか。それに人たらしでもあるようだ。 運転手、ユーセフともすぐに仲良くなってアラブの世界に入って行く。 やりてのビジネスウーマンも女医さんとも仲良くなれるのか。やりてのセールスマンか 人がいいのか? できそうでできないメイクラブのシーンは圧巻だ。 ユーモアたっぷり、理不尽たっぷり、とても面白い。 さて、王様へのプレゼンは成功するのか?

小林紀晴、「旅をすること」 旅という名前がどっかについた本はつい手にとってしまう。見て面白い本もあれば 面白くない本もある。特に写真家の旅の本ってどうなんやろ? 前に藤原新也って 人の「印度放浪」や「西藏放浪」を読んだときは、文章よりもとても鋭い感性の写真が あるのに驚いた。それに引き込まれて文を読んでいくととても魅力的でぐいぐい 惹き込まれていった記憶がある。 他にもタイトルは忘れたけど、写真だけでぐいぐいっとパンチを受けてしまった やつもある。やっぱりプロの視点ってすごいんやなあって思った。 この本も表紙の写真やぱらぱらめくった写真を見ながら面白そうやなあって読み始めた。 気になる写真がたくさんある。 けど、話がいったりきたりでどうも入っていけない。何となくニューヨークでの 暮らしとアジアの旅の間をふわふわしてるけど、写真からも文からも伝わって くるもんが薄いんではないかと思ったり、わしの感性がえらい鈍いんやなあって 思ったりした。 思わぬ感動をいただく本もあれば、思わぬがっかりもまたしょうがない。 いい本に巡り会えるよう、頑張りましょう。

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最近読んだ本、「マチネの終わりに」、「終わりなき旅の終わり さらば、遊牧夫婦」

平野啓一郎、「マチネの終わりに」 若き天才ギタリスト、蒔野聡史、今をときめく時代の寵児になろうとしている。 かっこええ。 美しく聡明なジャーナリスト、小峰洋子、外国の高名な監督の娘でもあるらしい。 かっこええ。 こういう二人は出会ったとたんに恋に落ちる。 なるほど。 さて、どれほどの恋物語がと思いきや、二人はすれちがうばかり。 蒔野聡史のギター演奏がおかしくなってきた。天才の技はどうなってしまったのか? 愛を求める心の高ぶりが音をより一層磨き上げるんとちゃうんやろか?それとも 今ひとつ信じきれない心の揺れが音にためらいを生みだすんやろか? 恋の行方は音の行方でもあるらしい。 小峰洋子はいつのまにかアラブの騒乱の真っ只中にいるらしい。テロが生み出す 生と死のカタストロフィーで彼女は壊れてしまったのか? ええい、めんどくさい、やってまえよってつい思うのはゲスの感覚だ。 崇高な二人は許す愛と耐える愛をえらぶのか? 未来は過去を変えることができるのか? 許すことが至高の愛なのか? 二人の運命は果たしてどうなるのか? 言葉は美しくて行為はめんどくさい。 ギター曲が聴きたくなる。 そんなお話。

近藤雄生、「終わりなき旅の終わり さらば、遊牧夫婦」 夫婦でバックパッカーをやって旅をする話。とても面白い。 旅の話はどんな本でもいいなって思う。 旅をするのは楽しい。いろんなところを旅して、出会った風景、出会った人たち のことを心に焼き付けて帰る。帰った時は溢れる想いが頭の中に一杯つまってる。 忘れんうちに絵に描いて、文に描いて、写真も整理して、なんて思ってるうちに どんどん消えて行く。絵にも写真にも言葉にも音や匂いや味わいは映らへん。 人の心も映らへん。それでもやっぱり時にはそれをきっかけに想い出が膨らんでいく。 きつい想い出や危ない想い出、心がヒリヒリするような冒険、このあとどうなるか 全く読めない窮地をどう切り抜ける、そんなんもええかも知れんけど、全く普通の 旅にも良い旅がたくさんある。 たぶんその目で何を見るか、何を感じるか、そういう感性によるんではないか、 そやからええもん、ええ心を発見できる感性を磨かなあかんなあって思っている。 この本でもそういう楽しさがいっぱいあってとてもええなあって思うけど、 何故かきつい旅をすることが目的みたいなとこもあって、人の善意や助けを前提に 行動してるように感じられるとこもあるような気がしてそれが少々気に入らんなあって 思ったりした。 いずれにしろ、「漂泊の想いやまず・・」 いつも良い旅をしていたいもんだ。

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最近読んだ本、「つつましい英雄」、「六代 豊竹呂大夫 五感のかなたへ」

マリオ・バルガス=リョサ、「つつましい英雄」 読んでて途中で気がついた、この作家、前に読んだ「アンデスのリトゥマ」と同じ 作家とちゃうやろか? ペルーの地方の町の描きかたとか人物の描きかたがとても 似てる感じがして、どっかで読んだ感じやなあって思てるうちに思い出した。 調べてみたらやっぱりそうやった。 ペルーの地方都市ピウラにフェリシト・ヤナケという小さな運送会社を経営する男がいる。 若い時からこの道一筋で叩き上げた真面目一本の男だ。誰からの脅しにも屈してはならない という父の教えを固く守っている。 そしてある日、ヤナケのもとに一通の手紙がきた。蜘蛛の印がはいった脅迫状だ。 災いを避けたければ金を出せというのだ。 どんな災いなのか? 困った時にたよりになるのは予言者アデライダだ。彼女の予言は外れたことがない。 しかし、今回は何もわからないという。彼と愛人マベルとの関係は微妙におかしくないか? 軍隊に送った息子ミゲルは本当に改心したのか? 首都リマに住む、リゴベルトはそろそろ仕事を引退しようとしてる。上司の イスマエルはもうちょっとだけ待ってくれと言う。実は、妻と死別している彼は メイドのアルミダと結婚しようとしているのだ。 この歳になって今更何故? ドラ息子たちに財産を渡したくないのか? どちらの事件もどんどん波乱を起こして複雑になっていく。そしていつの間にか 交わって来る。 どこが? なぜ? どうして? リトゥマと同じように町や村の普通の暮らし、原住民族への差別感そんなもろもろが 目の前に立ち上がって来る。 とても面白い。 よくできたサスペンスを読むようだ。

六代 豊竹呂大夫、片山剛、「六代 豊竹呂大夫 五感のかなたへ」 文楽の太夫の話、人形遣いの人の話、そう言うのを読むのはとても面白い。 わしはずっとサラリーマンで暮らしてきたんで、そういう世界のドロドロは隅々 までようわかってる。そやけど職人さんの世界、芸人さんの世界、徒弟のしきたりの 厳しい世界なんちゅうのはさっぱりわかってない。そやから余計興味があるし、 面白い。自分に厳しい、あるいは優しい、他人には厳しい、そして理不尽がまかり通る ややこしい世界、そんな中でアイデンティティを磨くのは大変な話で、部外のわしらは申し訳 ないけど唯面白い。ここではそんな芸事の世界だけでなくて、個人としての生き様が 描かれていてそちらの方が親しみ易くて味がある。多分わしと同世代の人なんでは なかろうか大江健三郎やら高橋和巳なんかを読んではる。 新しいものへの取り組みもとてもいい。 そういえばしばらく文楽に行ってないなあ、行きたくなってきた。

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最近読んだ本、「天国に行きたかったヒットマン」、「雨月物語精読」

ヨナス・ヨナソン、「天国に行きたかったヒットマン」 この人の本、「国を救った数学少女」、「窓から逃げた100歳老人」どちらも ものすごく面白かった。抱腹絶倒ものだった。なんと言うハチャメチャな発想、 なんと言う大胆不敵な行動、世界の大物を手玉にとって、民間人の癖に原爆まで 手に入れて、何をするやら、予測不能の大活劇、そんなこと有り得へん世界やのに 変に説得力がある。素晴らしい。 これもそんな本だ。 素手で一発で人を殴り殺しかねない、あるいは殺ししかできない、そういう恐ろしい 男が刑務所からでてきた。彼をヒットマンアンディシュと名付けよう。 ふらふらと場末の安ホテルにやってきたがそこにはどじな受け付け係の若い男と 教会から追い出された若い女の牧師がいて、そこからわけのわからんドタバタが 始まる。わかがわからんうちにヒットマンアンディシュのこわもてと腕っ節が 金になるとわかってきた。もはやブランド化していて、どこをどつくか、骨の 一本も折るかでビジネスが成立してしまうのだ。 金はいくらでも入って来る。 しかし、うまい話は長くは続かない。 ヒットマンアンディシュは神の道に目覚めるのか? 受注した暴力沙汰はどうなるのか? 裏世界のボス、伯爵、伯爵夫人は彼らをどうするのか? 軽くて楽しい、ゆるっと楽しめる。

稲田篤信編著、「雨月物語精読」 大分前になるけど、「雪女」って映画をみてとても面白かったんで怪奇物の原作を 読んでみたくなった。けど、ラフカディオ・ハーンの本はあんまり面白ろなかったんで こっちにしてみた。「雪女」の話はないけどとても面白い短編集だ。 白峰 有名な西行が崇徳院の墓を訪ねて亡霊を諌める話。 菊花の約 来年の重陽の節句に又会おうと固い約束をしたけど、訳あって死んでしまった男が 律儀に約束を果たそうと魂になって会いに来る話。 中国の昔話からとったと思う。 浅茅が宿 いにしへの真間の手児奈をかくばかり恋てしあらん真間のてごなを 有名な真間の手古奈の悲恋の話。 夢応の鯉魚 夢の中で鯉になって遊んでいたが、釣られてしまった。 ありゃりゃと思ったら目が覚めた。 これも中国の昔話からとったと思う。 仏法僧 忘れても汲みやしつらむ旅人の高野の奥の玉川の水。 高野山の奥の玉川の水は飲むなと弘法大師の言い伝えがあるらしい。 この本では思い違いと書いてるけど、玉川上流では銅や水銀がとれた事があるんで やっぱり毒があったんとちゃうやろか(私の意見)。 高野山で秀次たちの亡霊に脅される話。 吉備津の釜 吉備津神社釜占いの話は今もこの神社に残っている。 蛇性の婬 有名な道成寺の話。 清姫に見込まれた安珍の話のバリエーションか? 青頭巾 死人を食う鬼になる。 これも中国の昔話やと思う。 貧福論 読みやすくて楽しい。 […]

最近読んだ本、「海の見える理髪店」、「絢爛たる影絵ー小津安二郎」

萩原浩、「海の見える理髪店」 不思議な理髪店があった。何の変哲もなさそうな田舎の店に不思議と客が絶えない。 しかも有名人がお忍びで来ることも多いのだそうだ。かっこええ。 そういう店がいつのまにか客を取らなくなったようだ。 ある日、若者が一人その店を訪れた。 そして・・・・。 久しぶりで実家を訪れた。母はどうしてる? 私にとっては自分勝手で、独りよがりで、押し付けがましい・・・ しかし、老いが母をどう変えたのか?・・・・・ こんな夫とやっていけない。子供をつれて実家に帰ってしまった。しかし、 実家で居所はあるのか? そして不思議な手紙が・・・・・。 とてもシュールな話でもある。 母の離婚で実家に連れられてきた茜、子供にも絶えられない貧しさとやりきれなさが 続く。ある日、茜は海を目指して旅にでる。そして出会ったのは・・・・・? 父が残した形見の時計、あんな人生で僅かにのこったお宝のようなもの、どれほどの 値打ちが? お金より人生の足跡か? 中学生の娘が突然なくなった。それから数年。成人式を迎える日がやってきた。 未だに娘のことが忘れられない。夫婦がとった意表をつく行動とは? あまりにも切ない。 少しほのぼの、少しビター、少しシュール、少し素敵でかっこいい、少しおかしい、 少し哀れ、少し哀しい。 すこしずつの短編集。時々心が離れ、時々引き寄せられる。 そんな短編集。

高橋治、「絢爛たる影絵ー小津安二郎」 強烈な個性を強烈に描いた強烈な作品ではなかろうか? 作者は小津安二郎を とても嫌いでとても憎んでいてしかもその個性と才能にどうしょうもなく惹かれて それを認めざるを得なくてあえて描く、描くからには余すところなく描くという 心の中から生まれた本なんとちゃうやろか? それにしても映画ってなんて恐ろしい、こんなに鬼気迫る環境の中からでしか、 生まれて来んとあかんもんなんやろか? わしは素人やから映画を見てもその裏側は なんもわからん。ただストーリーを追って、喜んだり悲しんだり、笑ったり泣いたり、 興奮したり、感動したりしてるだけやけど、それがどういう企みの元に組み立てたてて、1枚、 1枚のカットに落とし込むのか、役者は何をどうみせるのか、観客の心と視線を どう誘導するのか? ありとあらゆるところに拘りと才能が妥協なく注ぎ込まれる ところがなんと凄まじい。 小津の映画がこんなんやったら他の人の作品ってどんなんなんやろ、今の映画は どんな風につくられているんやろ? これから映画をみる見方が変わって来そう やなあって思う。いろんな興味と疑問をもってしばらくは映画を見るかもしれんけど そんなん知らんし、考えもせん方がかえってオモロイかもしれんとも思ったりする。 プロの世界って怖いですなあ。 シンガポールの話も面白い。

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